人材領域のネットサービスを展開するビズリーチは6月14日、採用管理SaaSとして「HRMOS」を発表。発売当初は月額5万円で提供する。同時に、セールスフォース・ドットコム(SFDC)との業務提携も発表し、共同でアプリケーションを開発するなどソフトウェア事業を拡大する。
HRMOSは、人材の採用育成、登用、評価までの意志決定を深層学習(ディ―プラーニング)といったAIにより最適化する人事部門向けSaaS。今回は第一弾として、企業の採用管理ができるSaaS 「HRMOS採用管理」をリリースする。 HRMOS採用管理はこれまでバラバラに管理されていたという人事管理データを一元化し、求人作成や進捗管理、社員紹介採用などの採用業務を効率化する。AIによりどのような人材がその会社で活躍するか特性を可視化するという。
ビズリーチ 代表取締役社長 南壮一郎氏
HRMOS採用管理で特にアピールしていたのはコスト削減である。求人媒体や人材紹介会社ごとの選考実績から、効率の良い採用経路を分析し、コストパフォーマンスを可視化、面接官の評価傾向もデータ化するという。「採用経路を分析してどのような手段が最適なのか、判断するツールがなかった」(ビズリーチ)
また、従業員への求人案内を備えることで社員紹介(リファーラル)採用をはじめとしたリクルーティングを促進させ、採用コスト削減にもつなげる。
今後、2016年秋に 「HRMOS 勤怠管理」を、2017年春には 「HRMOS評価管理」のリリースを予定し 3年後の2019年6月に導入企業数、2000社以上を目指す。
ビズリーチの代表取締役社長の南壮一郎氏は人材サービス業を通じ、「採用した社員のパフォーマンスを数値化したい」「採用した社員の評価を採用業務の改善に生かしたい」という顧客の要望が多かったと説明。採用の現場では採用した人材が、その後どのような成果を出したかを検証している企業は少なく、営業やマーケティングのように効果検証した結果を生かし、コストや生産性の改善に役立ててほしいという考えを示した。
人材領域のネットサービスから、IT事業へ拡大
ビズリーチはこれまで人材領域のネットサービスを提供してきたが、一般企業用にSaaSを提供するのはこれが初めてとなる。この3月に発表会で登壇したYJキャピタルや今回提携を発表したSFDCのインキュベータであるSalesforce Venturesなどから37億3000万円を調達。この際、HRMOSの開発を発表、開発の原資にしていた。
一方、HRMOSが2017年春に予定している評価管理(タレントマネジメント)分野のSaaSではSAP「SuccessFactors」や、Oracle「taleo」などが先行している。対応は2017年春となるが採用管理と評価管理を一気通貫で提供するソフトはこれらの競合にはない強みと言える。南氏はこのほか「AIなど最新テクノロジ活用する」「日本の人事制度に合わせたものにする」という点が強みだと説明した。
HRのSaaS領域へ進出する理由として、全世界のクラウド市場の2014~2018年の年平均成長率は23%、2018年には約14兆円程度であるにもかかわらず、世界での企業IT投資はまだ約3%程度しかクラウドに向いていないと説明、市場の成長性をアピールした。さらに人材領域向けのクラウドサービスが増えている点や、採用市場が流動化しており、人材紹介業が伸びているとした。