「PaaS改め“CaaS”」:レッドハットがコンテナ基盤「OpenShift」をリブランド

羽野三千世 (編集部)

2016-08-10 11:33

 レッドハットは8月4日、同社のコンテナ戦略に関する説明会を開催。これまでPaaSと位置付けてきた「Red Hat OpenShift Enterprise」を“Container as a Services(CaaS)”と再定義し、製品名を「Red Hat OpenShift Container Platform」にリブランドすると説明した。

 OpenShift Enterpriseは、コンテナアプリケーションを構築するためのプラットフォーム製品。バージョン3の「OpenShift Enterprise 3」からDockerフォーマットをサポートしており、現行製品はRed Hat Enterprise Linux(RHEL)、Docker、コンテナオーケストレーションツールKubernetes、Dockerレジストリなどで構成される。

 これまで、Red HatはOpenShift Enterpriseを“コンテナアプリケーション基盤としてのPaaS”としてきたが、コンテナ自体がアプリケーションプラットフォームの性質を持つことから、PaaSと位置付けるにはややこしい面があった。そこで今回、CaaSという概念を新たに打ち出し、製品ブランドもOpenShift Container Platformに変更した。新ブランドを冠した新版として、9月に「OpenShift Container Platform 3.3」をリリースする予定だ。


Red Hatが定義するContainer as a Services(CaaS)

Dockerコンテナの価値とは

 アプリケーション基盤としてのコンテナのメリットについて、レッドハット プロダクト・ソリューション本部 本部長 岡下浩明氏は、「既存・新規のさまざまなタイプのアプリケーションをコンテナにパッケージしてホストOSにデプロイでき、アプリケーションの種類に関わらず統一手法で運用管理できる。アプリケーションが小さいためデプロイも高速化する」と説明。また、「Dockerコンテナと、従来のSolarisコンテナやメインフレームのコンテナとの違いは、物理、仮想、パブリッククラウドのどこの環境にも持っていけるポータビリティ」(岡下氏)だとした。


コンテナによって開発と運用のシンプル化、デプロイの高速化、アプリケーションのポータビリティが実現される

 開発と運用のシンプル化、デプロイの高速化、アプリケーションのポータビリティといったDockerコンテナのメリットを享受するためには、開発/デプロイから、運用/ライフサイクル管理までを自動化するオーケストレーションツールが重要であると岡下氏。代表的な事例として、Googleでのコンテナとコンテナオーケストレーションを紹介した。

 Googleでは、2億個のコンテナアプリケーションを毎週更新、デプロイしている。コンテナの開発言語はJava、PHP、Goなどさまざまだが、運用管理者は1人あたり約150万個のコンテナを担当しているという。もちろん人間が150万個のアプリケーションを管理することはできないのでコンテナオーケストレーションによる自動化がこれを支えている。

Dockerコンテナの基盤としてOpenShiftを使う価値とは

 Dockerコンテナの基盤としてOpenShift Container Platformを使う意義については、「堅牢なコンテナ環境」「(Open Container Initiativeが定める)業界標準であるDocker形式への対応」「Kubernetesによるオーケストレーション機能」「コンテナレジストリ」を挙げた。


レッドハット プロダクト・ソリューション本部 本部長 岡下浩明氏

 OpenShiftのコンテナ環境の堅牢性は、「RHELが搭載するSELinux(Linuxカーネルのセキュリティ拡張モジュール)によって、Dockerリソースへのアクセス制御をしている」(岡下氏)。また、OpenShift Container PlatformのコンテナOSとして機能するRed Hat Enterprise Linux Atomic Hostの次期バージョンでは、コンテナスキャニングのための新しいユーザインタフェース(UI)を提供する。これは、従来からOpenShiftに統合されていたBlack Duck HubのUIを改善したもので、Black Duck Hubが提供するコンテナアプリケーションやライブラリに対する脆弱性のマッピング、イベントリの監視といった機能の使い勝手をシンプル化した。さらに、Atomic Hostの最新バージョンにはOpenSCAPスキャナのテクノロジプレビューも含まれる。

 また、OpenShiftがサポートするコンテナの仕様は常に業界標準を採用していく方針だと説明した。「現在はDockerを採用しているが、Open Container Initiativeの標準にのっとり、その時代に合った形式に対応していく」(岡下氏)

 そのほか、次期バージョンのOpenShift Container Platform 3.3では「Red Hat Gluster Storage(RHGS)」を統合し、コンテナアプリケーションから永続的なストレージとしてRHGSを利用できるようにする。OpenShiftのコンテナ環境内で利用するRHGSの料金は、OpenShiftのサブスクリプションライセンスに含まれる。

 なお、OpenShiftシリーズの提供形態を拡充することも発表された。オンプレミス向けには、開発者向けの無償版「OpenShift Container Local」と、テスト環境向けの廉価版「OpenShift Container Lab」を新たに用意する。さらに、現在パブリッククラウドサービスとしてベータ版を提供している「OpenShift Online」は、コンテナ仕様をDockerに切り替えた正式版が2016年中にリリースされる予定だ。占有クラウドで利用できる「OpenShift Dedicated」についても、現在のAWSに加えて近日中にAzureやGCPへも対応する計画だとした。


OpenShiftの新しい提供方式

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