VMWorld

サプライズ登壇のマイケル・デル--VMwareの独立性を強調

末岡洋子

2016-08-31 11:28

 Dellが670億ドルをはたいて買収するEMC。この取引はEMC傘下であるVMwareにどのような影響を与えるのか。

 ラスベガスで開催中の「VMworld 2016」で、Dellの会長兼最高経営責任者(CEO)、Michael Dell氏がサプライズで登場。VMwareのCEO、Pat Gelsinger氏と”better together”としてメリットを説明した。ここでは、両CEOがプレス向けの質問に答えた内容を中心にまとめたい。

 DellとEMCは合併後、「Dell Technologies」として新スタートを切る。Dell氏は5月にEMCが開催した「EMC World」に登場し、この新社名を発表した。実は、このEMC Worldで毎年顔を出しているVMwareのGelsinger氏の姿がなかったことがちょっとした話題となったが、今回Dell氏がVMworldに登場したことで、VMwareとDellの関係が良好であることをアピールする格好となった。

Michael Dell氏がサプライズで登場し、Pat Gelsinger CEOと”better together”としてメリットを説明した
Michael Dell氏がサプライズで登場し、Pat Gelsinger CEOと”better together”としてメリットを説明した

 2015年秋の「Dell World」直前に発表されたEMC買収計画だが、当時からVMwareがどうなるのかに大きな注目が集まっていた。当時Dell氏はVMwareの独立性を維持する旨を明らかにしていたが、この日も両CEOは独立性を強調した。

 Gelsinger氏はDell Technologiesのファミリ企業となることについて、「Dellはわれわれが今後も独立した企業として顧客に製品を提供し、エコシステムを展開することを支持している」と切り出す。

 特にエコシステムについては、今年のVMworldで約150社が出展し、400ものセッショントラックがあることに触れ、VMwareのエコシステムの活気を強調した。Dell氏はステージ上でVMwareのパートナーや顧客に向かって、「VMwareのオープンなエコシステムは成功の鍵を握っている」と賞賛している。

 独立性については、「2年後にVMwareの意思決定とDellの意見が対立した場合、どうなるのか?」という質問に答える格好で、Gelsinger氏は今年2月に発表したIBMとの提携を持ち出した。IBMとDellは一部競合の関係になるが、Michael(Dell氏)は”VMwareにとっては正しいことだ。やるべきだ”と背中を押したとのことだ。

 エコシステム、独立性がそのままだとすれば、VMwareがDellの買収で得られるメリットは何かーーGelsinger氏が挙げたのは「成長の加速」だ。例えばインド市場。インドはVMwareよりDellの知名度がはるかに高い市場の一つで、VMwareにしてみれば地方都市に拡大するにあたってDellの後ろ盾が重要になるという。「(インド、ブラジルなどは)better togetherのチャンスがある市場だ。Dellの存在感が重要になり、共同イノベーションだけでなく、製品の存在感を強化して販売を加速することができる」とGelsinger氏。すでに2社のカントリーマネージャーレベルで話し合いを持っているという。買収による相乗効果は「10億ドル」(Gelsinger氏)と見積もる。


非公開企業に移行したことの利点を生かし、EMC、VMwareとの関係を築くと説明するDell氏

 「(インド、ブラジルなどは)better togetherのチャンスがある市場だ。Dellの存在感が重要になり、共同イノベーションだけでなく、製品の存在感を強化して販売を加速することができる」とGelsinger氏。すでに2社のカントリーマネージャーレベルで話し合いを持っているという。

 一方、DellはサーバやクラウドでMicrosoftと提携しているが、VMwareが傘下に入ることはDellの既存の提携に影響を与えるのだろうか。こちらについても、「VMwareがオープンなエコシステムとパートナー戦略をもつのと同じ。DellはMicrosoftと今後も協業するし、Red Hatとも提携している」とDell氏は述べる。

 重要なのは(競合との関係よりも)顧客の声という。「われわれの業界は常にオープン性と選択が重要な業界だ。生き残りには柔軟性が大切で、そのために顧客がなにを望んでいるのかに常に耳を傾ける必要がある」とDell氏は顧客重視をアピールした。

 買収後の巨大企業の経営については、大企業ではあるが迅速に動くことができる、とDell氏は主張する。Dellは非公開企業であり、公開企業に課される四半期ごとの業績発表などがないため「長期的な視点に基づいて柔軟に展開できる」というのが根拠だ。合わせて、Pivotal、Boomiなど買収したスタートアップが新しい分野で迅速に展開していることにも触れた。なお、VMwareとSecureWorksは今後も公開企業として運営されることも確認した。

 Gelsinger氏は、大規模なベンダーであることは、大企業顧客にとって安心感をもたらすと述べ、「CITI Group、General Electoric(GE)などの顧客は取引に喜んでいる」とした。

 協業については、Dell、VMware、EMCの3社で”エンジニアドソリューション”の開発が進んでいることも示唆した。「買収完了後、全く新しいエンジニアドソリューションのシリーズを披露できるだろう」とDell氏。その買収については、現在中国の規制当局のゴーサインを待つばかりだが、「中国の規制当局とのやりとりを続けており、概して好意的なものだ。予定通り、2016年5月から10月の時間枠で買収を完了できるだろう」とDell氏は述べた。

 翌日の8月30日(現地時間)、DellとEMCは中国商務部より承認が得られたとし、9月7日に取引完了を見込むと発表している。

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