VMWorld

IBMとの提携強化--自由と管理の両立をテーマにVMworld開幕

末岡洋子

2016-08-30 16:37

 米VMwareは8月29日、米ラスベガスで年次カンファレンス「VMworld 2016」を開幕した。初日の基調講演では、同社が進めてきたSDDC(ソフトウェア定義データセンター)をさらに進め、複数のパブリッククラウドを管理する「Cross-Cloud Architecture」を打ち出し、それを具現化する製品を発表した。

 最高経営責任者(CEO)のPat Gelsinger氏は、「(さまざまなパブリック、プライベートクラウドを選択できる)自由の提供と同時に管理を可能にする」とパブリッククラウド時代の戦略を明確にした。13回目となる今年は、世界から約2万3000人が事前登録するなど規模が拡大、場所もサンフランシスコからラスベガスに移しての開催となった。

パブリッククラウドが50%を超えるのは14年後

 Gelsinger氏はまず、事業のトレンドから説明した。Googleの検索用語でも急上昇しているという「デジタルトランスフォーメーション」――だが、これは企業がそれぞれ育ててきた伝統的なビジネスと対立するものではないという。

 創業1892年、以来120年以上にわたって革新を続けるGeneral Electric(GE)の例を挙げながら、「伝統的なビジネスとデジタルビジネスは対立するものではなく、イコールの関係にある」とする。

VMwareのCEO、Pat Gelsinger氏。足を怪我したとのことで、足を引きずりながらステージに立った。
VMwareのCEO、Pat Gelsinger氏。足を怪我したとのことで、足を引きずりながらステージに立った。

 一方で、調査会社の米IDCによると、新しい方法で顧客とのエンゲージして、競合優位性を作り出している「デジタルリーダー」と分類できる企業は20%しかないという。リーダーとその他を分けているのが「企業のカルチャー」と「技術」だ。

 カルチャーでは「これまでのルールを書き直すのではなく、今日の環境に合わせて最適化して次のレベルに移動する必要がある」とGelsinger氏。技術も同じで、これまでのクライアント/サーバを最適化するのではなく、モバイルとクラウドアーキテクチャを活用する必要があるという。

 “クラウド”という言葉は当時GoogleのCEOを務めていたEric Schmidt氏が2006年8月に検索エンジンのイベントで、「(データが)雲(cloud)の中のどこかにある――われわれはこれをクラウドコンピューティングと呼んでいる」としたのが始まりとされている。

 それから10年、クラウドは少しずつ浸透してきた。2006年当時、当然ながらワークロードのほとんどは伝統的なITインフラの上で動いていた。わずか2%を占めたパブリッククラウドはSaaSの先駆けSalesforce.comであり、プライベートクラウドはゼロだ。

 5年後の2011年のスナップショットを見ると、ワークロードは8000万に、7%がパブリッククラウド、6%がプライベートクラウドとなる。そして現在、2016年はワークロードは1億6000万、パブリッククラウドは15%に、プライベートクラウドは12%になった。だが、いまだに73%が伝統的なITの上で動いている。

「いつクラウドの比率が50%になるのか」

 「クラウドの比率が半数を超えるのはいつか」。Gelsinger氏が社内のデータ部門に分析してもらったところ、答えは2021年の6月だという。パブリッククラウドが30%、プライベートクラウドは20%を占め、残りが伝統的なITとなる。なおパブリッククラウドのうち14%はSaaS、16%はIaaSだという。

 パブリッククラウドが50%を占める時期については、14年後の2030年というのがVMwareのデータチームの予想だ。その時点でワークロードの数は現在の3.5倍に当たる6億近くになる。パブリッククラウドは52%を占め、プライベートクラウドは29%に、伝統的なITは19%になっているという予想だ。「14年も先だ。すべきことがたくさんある」とGelsinger氏。

 クラウドのトレンドに合わせて、ホスティング市場も成長を遂げる。この市場は現在、600億ドルだが、2021年にはその規模が1100億ドルになると見込む。顧客はハードウェアの運用をプロに任せたいと思っており、マネージドサービス市場は80%の成長率で拡大する。

 「大きなチャンスがある」とGelsinger氏。ここでVMwareは「vCloud Air Network(vCAN)」としてサービスプロバイダーがVWwareの技術を利用してクラウドホスティングサービスを提供できるプログラムを展開している。現在、パートナーとして4200社が参加しており、地理的には120カ国に拡大しているとGelsinger氏は報告した。

 端末側はどうだろうか。PC、タブレット、モバイル端末は2016年に82億台、2021年には87億台となる予想だが、目覚ましいのはインターネットにつながる「モノ」だ。2011年には12億台に過ぎなかったモノは、2016年には41億台に、2019年に人が利用する端末を上回り2021年には180億台に達すると見ている。

IT部門の役割は変わる――”自由を与え管理”

 これらのトレンドの中、ITの役割はどうなるのか。「IT市場は縮小するという通念は正しくない」とGelsinger氏。「クラウドによりITはさらにコスト効率が高くなり、アクセスしやすくなる。ITへの投資はさらに拡大する」と続ける。

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