現在クラウドを最も利用しているのは、技術ベンダー、ついで建築、リソース、銀行、製造などが続いているという。産業だけではなく、企業の部門レベルでもクラウドの利用が進んでいる。部門単位でのITを導入する「セルフサービスIT」(場合によっては”シャドーIT”と呼ぶ)は、営業とCRM、製品開発、人事、ファイナンス、マーケティングとさまざまな部門で進んでいる。
同社が「The Economist」と実施した調査の結果、2年後にはこれらの部門によるIT投資は平均して24%増加するとの予想が出てきた。企業におけるITの位置づけの複雑性は増すが「セキュリティの責任は相変わらずIT部門にあるとみなされる」とGelsinger氏は言う。デバイスもアプリケーションもITが関与しておらず、データセンターもネットワークも運用していない。それでもセキュリティの責任はITというのが現実だ。
Gelsinger氏はこの状態を、自由(Freedom)を求める子供と管理(Control)しようとする親に例えた。クラウドサービスを選択できるという自由を提供しながら、一定レベルのセキュリティ、コンプライアンスを維持する――これがクラウド時代のVMwareのフォーカスとなる。
SDDCからパブリッククラウドCross-Cloud Architectureへ拡大
VMwareは5年前のVMworldで、プログラマブルに自動化されるデータセンターとして「Software-Defined Data Center(SDDC)」構想を打ち出した。その後、コンピュート、ネットワーク、ストレージ、それらを管理する管理と自動化の4分野で進めてきた。Gelsinger氏はその成果を次のように報告する。
コンピュートではvSphereにより、サーバワークロードの80%が仮想化された。フットプリントを縮小し、業界全体で大きなコスト削減を実現した。ネットワークでは、Niciraの買収によりネットワーク分野を大きく前進させた。同社のネットワーク仮想化ソフトウェア「NSX」は、この18カ月での顧客の受け入れが400%増とのこと。「キャズム論でいうところの超成長期に入った」とGelsinger氏はいう。
ストレージでは、ストレージ仮想化ソフトウェア「VSAN」の顧客数は5000社に達した。クラウド管理プラットフォームの「vRealize」は、分野でのリーダー的な製品と位置付けられている。
VMwareはSDDCを利用したプライベートクラウドの構築をプッシュする一方で、パブリッククラウド分野にも拡大している。2015年のVMworldでは、vSphereユーザーにゼロダウンタイムで、VMwareが展開するパブリッククラウド「vCloud Air」へのマイグレーションを提供する「vCloud Air Hybrid Cloud Manager」を発表しており、VMworld 2016ではその最新版を発表した。
「さまざまなパブリッククラウドを利用し、デバイスも増える――新しい業界の課題にも対応する」としてGelsinger氏が発表したのが、「Cross-Cloud Architecture」だ。さまざまなクラウド、さまざまなデバイスで、共通のオペレーティング環境を利用して、アプリの運用、管理、セキュリティ対策を講じることができるという。「自由を提供しつつ、コントロールもできる」を実現すると述べる。