コンピュータの処理能力の向上や「ディープラーニング」と呼ばれる自動学習の進歩などによって、人工知能(AI)の発達の影響が社会・経済の各分野に及んでいる。すでに2016年の今も自動運転やスマートフォンの音声認識、文章や音楽の自動生成など、さまざまな分野にAIの技術が浸透してきているのは周知のとおりだ。
では、こうしたAIの進展は、2040年代の社会にどのような影響をもたらすのか。「AI相互のネットワークシステム」 が形成され、自動的に連携する社会・経済とはどのようなものか。この2月に発足した「AIネットワーク化検討会議」(旧称:ICTインテリジェント化影響評価検討会議)について、総務省 情報通信政策研究所(IICP)の調査研究部長の福田雅樹氏に話を聞いた。
AIネットワーク化とは何か
総務省情報通信政策研究所調査研究部長 福田雅樹氏
――「AIネットワーク化」とはどのようなものでしょうか。
AIネットワーク化とは、「AIを構成要素とする情報通信ネットワークシステム」を意味する「AIネットワークシステム」の「構築」と、AI相互間の連携などAIネットワークシステムの「高度化」の双方を総称する概念です。
これは、検討会議での必要上定義したものです。クラウドや自動運転のシステムにAIを用いること、すなわち、AIネットワークシステムの「構築」に向けた取り組みはは国内外ですでに始まっていますが、それよりさらに先の段階においてはAIとAIとがつながり、そしてAIと人体とがつながるようになると考えられます。これをAIネットワークシステムの「高度化」と呼んでいます。こうした展開が今後いろいろな分野で並行して進んでいきますが、それらの展開を総称して「AIネットワーク化」と捉えています。
AIネットワーク化については、その進展段階を4つの段階として整理しています。第1段階は、「AIが他のAIと連携せず、インターネットを介するなどして単独で機能」する段階です。この段階は、インターネットにはつながりますが、AI同士はつながらないという段階です。この段階には、既に国内外の社会・経済の各分野で到達している場面が急速に増えつつあります。
AIネットワークシステム