人工知能同士をつなぐ--「AIネットワーク化」が社会に与えるインパクト(前編)  - (page 4)

小船井健一郎 山田竜司 (編集部)

2016-10-27 07:00

――「智連社会」とはどういう社会像なのでしょうか。

 AIネットワーク化が進むことにより、データ・情報・知識に基づいて物事に対処する人間の能力としての「智慧」が互いに連なって動かしていく社会に向かっていくものと考えられます。ここで「智慧」というのは、AIや人間の脳がデータ・情報・知識を扱う機能としての「知能」そのものではなく、データ・情報・知識に基づいて、AIや人間の脳の知能を活用して物事に対処する「人間の能力」のことです。

 「智連社会」は、AIネットワーク化の進展を通じてもたらされる社会の在り方として目指すべきものとして提示した社会像です。「智連社会」の内容は、人間「が」AIネットワークシステムと共存し、データ・情報・知識を自由かつ安全に創造・流通・連携して「智のネットワーク」を構築することにより、あらゆる分野におけるヒト・コト・モノ相互間の空間を超えた協調が進展し、創造的かつ活力ある発展が可能となる社会というものです。この智連社会は、「人間『が』…共存し…創造・流通・連携して…構築する」とあるとおり、人間が尊厳をもった自律的な主体として振る舞うことを想定する人間中心の社会像です。

 「智連社会」において、人間が、「智のネットワーク」により創造・流通・連結するデータ・情報・知識に基づいて、社会の各分野における物事に対処していく流れを示したのが、以下の図です。以下の図は、人間がAIネットワークシステムと共存して「智のネットワーク」を構築して、「智のネットワーク」がデータ・情報・知識を創造・流通・連結することにより新たな知識を生み出しますが、その新たな知識は学術・技術を発展させたうえで、産業界における商品・サービスの供給をも高度化します。それら知識や商品・サービスが文化、教育など社会の各分野に波及していく様子を描いています。

図

 この社会像は、個々人がAIネットワークシステムの機能を利用することを通じて社会全体として「智のネットワーク」を構築することを想定するものです。

 このような社会像において、個々人が社会に参加し、社会の各分野で活動していくためには、個々人がその希望に応じてAIネットワークシステムの機能の「利用者」としての地位を獲得して維持できることが期待されるほか、AIネットワークシステムの機能を廉価で安心して安全かつ安定的に利用できることなど「利用者」としての利益が保護されることが期待されます。これらのことは、AIネットワーク化に関する政策や制度の基本的な在り方を構想する際の基礎となるのではないかと考えられます。

<後編に続く>

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