日本マイクロソフトは11月2日、米国本社のセキュリティ担当者を招き、グローバルおよび日本市場におけるセキュリティ施策について説明した。その一環として日本マイクロソフトはラックと協業し、「IDベースドセキュリティソリューション」を提供すると発表した。
Microsoftは2015年に「Enterprise security in a mobile-first, cloud-first world」と題したモバイル&クラウド時代のエンタープライズセキュリティ施策を発表している。それは、自社のセキュリティスタンスを明確にし、透明性を持ってサイバー脅威に立ち向かう姿勢や解決方法を提示するものだった。
今回来日したMicrosoft WW(World Wide) Chief Security Advisor Jonathan Trull氏は長年セキュリティ分野に携わってきた人物。Trull氏は、顧客のビジネスのデジタル化に向けた取り組みを支援する上で、顧客から信頼を得るためのポイントとして、「透明性」「プライバシー」「コンプライアンス」「セキュリティ」の4つを掲げた。これまで49種類もの第三者機関による監査など透明性をアピールしてきた同社だが、今後、特に注力するのがセキュリティの分野だとTrull氏は説明する。
Microsoft WW Chief Security Advisor Jonathan Trull氏
一般的にセキュリティ対策は「保護」と「検出」、そして「対応」のサイクルで回っていくものの、「検出から対応までのギャップを埋める方法が必要」とTrull氏。多くの調査機関が発表しているように、サイバー攻撃者が企業内のシステムに侵入し、検出されるまでに要する期間は200日前後だと言われている。
Trull氏はこの部分を“セキュリティギャップ”と表現。その解決策が「ID統制」だと説明した。「例えばファイアウォールやメールの添付ファイル、ドキュメントなど多様な保護範囲があるものの、われわれは、IDをユーザーのみならず、デバイスやネットワークといった多様な範囲で利用する『ID統制』が今後のセキュリティ強化と利便性向上を両立する鍵だと考えている」(Trull氏)
さらにMicrosoft独自のアプローチとして、「プラットフォーム」「インテリジェンス」「パートナー」と3つのキーワードを並べた。
プラットフォームについてはセキュリティに対するインテリジェンスを高めることで、IDやデバイス、アプリケーションとデータ、そしてインフラストラクチャを包括的に防御すると説明。既にMicrosoftは、オンプレミスサーバはAD(Active Directory)で保護し、SSO(シングルサインオン)をOffice 365やMicrosoft Azureなどに適用して、EMS(Enterprise Mobility+Security)でモバイルデバイスを保護するなど多層的なセキュリティソリューションを用意している。
さらに集積したセキュリティデータを「Azure Machine Learning」などを用いて解析したデータと、セキュリティ専門家で構成されたソリューション「インテリジェント セキュリティ グラフ」をアピールした。インテリジェント セキュリティ グラフは2016年から本格的な取り組みを始めたものの、集積データは以前のものを含んでいるため、データ量はPB(ペタバイト)級。最近ではデータ間の関連性を分析し、さらなる精度向上を目指しているという。「収集したデータをリアルタイムで分析し、結果をチームで共有することでセキュリティギャップを埋められる」(Trull氏)
「インテリジェント セキュリティ グラフ」は、CDOCを筆頭に、能動的なセキュリティ対策を行う「Cyber Hunting Teams」、元弁護士や警察、法執行機関、セキュリティ専門家などから構成された「Digital Crime Unit」など多数のチームが含まれる