予測は容易ではない--特に未来に関する予測は難しい
しかしおそらく、ほとんどのカーナビでは(少なくとも中核的な機能では)機械学習を利用して動いてはいない。Malanov氏は、機械学習が万能の解決策にはなり得ない理由として、誤判定、モデルのバイパス、モデルの更新などの問題を挙げている。もちろんこれらも問題なのだが、機械学習を使うことの最大の問題点はほかにある。現在は、簡単に機械学習を使い始められる、とにかくデータを入力してやりさえすればよいという誤解が広く信じられているようだ。しかしAI2のOren Etzioni氏が述べているとおり、「機械学習の99%は人間の仕事」なのだ。
タスクに用いる正しいアルゴリズムを見つけたり、考案したり、選択したり、組み合わせたりする作業にも、アルゴリズムをトレーニングするためのデータセットを探し、適切にラベル付けする作業にも、システムのパラメータを調整する作業にも、人間の手を必要とする。同様に重要なのは、機械学習が適しているケースも存在するが、あまり向いていないケースもあるし、他のテクニックとの組み合わせが必要なケースもあるということだろう。
カーナビの例で言えば、スタート地点と、その地点からよく使われる経路の情報に基づいて、ユーザーが行きたい場所を機械学習で予測するというアイデアはあり得るかもしれない。しかし、予測の質はさまざまな要因に依存することを理解しておくべきだ。例えば、使用するデータセットのサイズや多様性(システムの利用者が少なく、全員が通勤にしか利用していなければ、「予測」もそれに応じたものになる)、予測モデルに組み込むパラメータの種類(時間帯を使うことはおそらくいいアイデアだろうし、運転手の年齢も関係するかもしれないが、車の色はおそらく関係ないだろう)、使用するモデルがシナリオにどの程度合致するかなどの要因は、すべて予測の質に影響を与える。
しかしより重要なのは、最善のデータセット、パラメータ、モデルを組み合わせても、現実の複雑な問題では、正確に予想できる保証はないということだ。これは、選挙結果を予想しようという試みが、失敗続きであることでも分かる。もう1つの有名な例は、外国為替市場の予想だ。中央銀行の判断が重要なパラメータであることは明らかであり、この要素はあらゆるモデルに折り込まれているはずだが、この判断は事実上予想不可能な質的及び量的な複雑さを伴う各種要因に依存しており、このことは最近のスイスフランの事例でも分かる。

どのような機械学習ならこの状況を予測できるだろうか。
提供:investing.com / Business Insider