アバナードは12月9日、2017年の技術動向予測を発表した。アプリケーションやプラットフォーム全般にわたるデジタルイノベーションの進展に伴い、企業や組織はそのワークフォース、顧客、パートナーとの関係の持ち方を考え直す必要があるという。
2017年に日本企業にとって特に重要となる3つの技術トレンドは以下の通り。
拡張現実が新たなエンタープライズの現実に
大企業は従業員同士の協力体制を改善し、その能力を高め、顧客との関係を深めるためのテクノロジを重視しており、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、複合現実(MR)といったテクノロジが、ゲームをはじめとする一般消費者向けの技術から、エンタープライズの領域へと急速に拡大している。
例えばARを活用することで、新たなデバイスや装置を使い始めたり修理したりする際にステップバイステップのガイドを視覚的に表示させることができ、単に作業を完了させるに留まらず、生産性を最大化したり、リスクを最小化することも可能になる。またAR体験は企業が顧客との関係を深めるための手法も様変わりさせようとしている。
こうしたことから2017年の日本の企業は、AR、VR、MRテクノロジをどのようにすれば最も活用できるかを理解するために、これらの技術の利用を試み始めるべきだと考えられるとした。
デザイン思考:イノベーションの未来は人間の体験を拡張する技術にある
2017年の企業と組織は、デジタルの活用によってユーザーエクスペリエンスの根本的な変革を進めていくこととなる。顧客と従業員がますますデジタルに強くなっていく中で、企業や組織が市場での競争優位性を維持するためにはデザイン思考が欠かせないものとなってくるためだ。
企業と組織がデザイン思考を取り入れることで、デジタルヒューマニストという役割も登場すると考えられる。共感力、クリエイティビティ、コラボレーションを発揮し、アジャイル手法を取り入れ、顧客と従業員がデジタルイノベーションプロジェクトに対して抱く倫理的な期待の代弁者となる存在だ。それはユーザーエクスペリエンスとデザインに留まらず、新たな技術革新の倫理にも及ぶ。
デジタル倫理:データで可能となることをすべて実行して良いわけではない
2017年、企業と組織の関心はデータの獲得からデータインテリジェンスへと移っていくと考えられるが、同時に複雑な倫理課題も新たに生み出されていく。アバナードが最近実施した調査によれば、企業の経営幹部(いわゆるCxO)の大多数が、スマート技術を職場で使用することから生じる倫理上の問題に取り組んでいるとのことだ。企業は顧客データについても同様のデジタル倫理のジレンマを抱えている。
例えば、保険会社では消費者の運転傾向を追跡するためテレマティクスデバイスを使用しているが、ドライバーは日々の自分の運転データを誰が所有しているのか認識しているだろうか。またそのテレマティクスデバイスをトリガーとして、事故が発生した際に保険会社が自動的に緊急サービスを呼び出すというのは、消費者にとって気持ちの良いことなのだろうか。
そのため、企業と組織は2017年には、デジタル技術がもたらす倫理的影響に関する従業員教育を施すことが必須となり、デザイン思考のアプローチの一環として倫理を義務付けることが求められるとしている。