CX(顧客体験)のトレンドはどうなっているのか――。
2月22日に開催された「ガートナーカスタマー360サミット2017」ではGartnerのリサーチ部門でバイスプレジデント兼最上級アナリストを務めるMichael Maoz氏が登壇。「仮想顧客アシスタント2.0は、どのようにしてカスタマー・エクスペリエンスに劇的な変化をもたらすか」と題する講演で解説した。
Gartner リサーチ部門バイスプレジデント兼最上級アナリストのMichael Maoz氏
講演では、AI(人工知能)を活用した顧客体験として、「仮想顧客アシスタント」(VCA)を紹介した。VCAはユーザーとマシンをつなぐ会話型のインターフェースで、人の代わりを務めるアシスタントだ。自然言語を使って人と同じように会話ができ、情報を提供してくれ、代わりに売買をしてくれる。
Maoz氏は、2000年に第1世代のVCAがMicrosoftのMSNに実装されてから、これまで進化を続けていると話す。今は第7世代にあり、感情の検知やパーソナライズ、コンテキスト認識などが可能になっている。
VCAにはさまざまなタイプがあり、チャットボットも作成できる。Maoz氏はVCAの例にGoogle Nowを挙げ、注目するスポーツの試合結果やこのイベントの出張先である東京の情報などがスマートフォンに表示されることを紹介した。
VCAの要素であるAIの盛り上がる理由をMaoz氏は、「コンピュータのパワーが進化したことと、機械学習の進化にある」と説明する。GoogleのAIへの取り組みは、昔から見れば奇跡のようなものとのことだ。
仮想顧客アシスタントが人にとって代わる
VCAのメリットの1つは、人の代替にある。例えば、Amazonではロボットが倉庫作業をしている。ある調査では職業の50%がAIに取って代わるとされるが、職業の件数が減るわけではなく、ATM(現金自動預け払い機)が登場した後で銀行の窓口担当者が増えたように、人にはより高度な作業が求められるようになる。
さらにVCAの例としてMaoz氏は、ファイルを探す作業のタスクを紹介してみせた。ファイルを探す時には、まずログインしてWordを起動する。Project Xのファイル名を思い出してフォルダを開き、ファイルを特定してから開く。VCAを使えば、AmazonのAIアシスタント「Alexa」(アレクサ)に「Project XのファイルをWordで開いて」と言えば足りる。
Maoz氏によると、VCAは総じてスピード、満足度、売上増加、拡張性、コスト削減、人依存の軽減といったメリットをもたらす。Gartnerの仮説では「2020年までに、顧客サービス/サポート業務の25%において、エンゲージメント・チャネル(顧客との関係を構築する接点)全体にわたってVCAテクノロジが統合される」という。Maoz氏は、さらに「2020年までに、モバイルによる顧客サービス/サポート業務の40%がVCAを介して行われる」と述べている。
VCAのような会話機能は、コンシューマーサービスにとどまらず、企業情報システムでも使われるだろうとのこと。Gartnerの仮説では、「2018年までに、エンタープライズ・ソフトウェア製品の新バージョンの少なくとも50%に、何らかの会話機能が搭載される」とされている。