レノボ・ジャパンは5月30日、企業向けセキュリティ事業を本格始動させると表明し、マルウェア対策製品「OPSWAT Metadefender」を発売した。同社のハードウェアと組み合わせた事前検証済みソリューションの提供に注力するとしている。
レノボ・ジャパン データセンター ソリューション事業 ソリューション営業本部長の橘一徳氏
同社は、1月に開いたメディア向け事業戦略説明会で、従来のハードウェアに加えてミドルウェアを含むソフトウェアの販売やITサービスの領域に進出するとしていた。今回のセキュリティ分野参入はその一環になる。
OPSWAT Metadefenderは、米OPSWATが開発するセキュリティソフトで、数十種類のウイルススキャンエンジンを同時併用したマルウェア対策、メールの添付ファイルやダウンロードファイルの「無害化」、脆弱性管理の3つの機能を持つ。レノボ以外に、ネットワン・パートナーズやネクスト・イットなども販売している。
データセンター ソリューション事業 ソリューション営業本部長の橘一徳氏によると、セキュリティ事業を検討する過程で、総務省が2015年に示した「自治体情報システム強靱性向上モデル」に着目し、その中で触れられた「無害化」による対策が民間企業にも広まる可能性があるとして、OPSWATの製品を販売することにしたという。
「OPSWAT Metadefender」の製品構成
OPSWATの売り上げの85%を米国市場が占め、主要顧客には米連邦政府機関や防衛産業、エネルギー、金融、製造の大手企業が名を連ねる。LenovoもFTPサーバのセキュリティシステムの一部で、OPSWAT Metadefenderを運用しているとのこと。
レノボによるOPSWAT Metadefenderの販売はパートナー経由で行われ、マルウェア対策機能を基本に、「無害化」機能や脆弱性管理の機能をオプションで提供する。OPSWAT Metadefenderの稼働が事前に検証されたレノボのx86サーバとのセット販売になり、パートナーごとに独自サービスなどが付加される場合がある。
OPSWAT Metadefenderのマルウェア対策機能は、Windows環境では最大30社、Linux環境では同10社のスキャンエンジンを選択でき、複数のエンジンで同時スキャンを実行することにより、既知のマルウェアの検出率を100%近くにできるのが特徴という。「無害化」機能は、メールの添付ファイルあるいはダウンロードファイルから有害なスクリプトやマクロを取り除き、ファイルを再構成してユーザーに配信する。脆弱性管理機能は、250種類以上アプリケーションの1万5000以上のバージョンの情報を利用して、PCのアプリケーションの脆弱性チェックや更新を実施できる。
マルウェア対策では複数ベンダーのスキャンエンジンを併用して検出率を高める
サーバを除いたOPSWAT Metadefenderの価格は、Linux環境向けがスキャンエンジン1種類(ユーザー選択)とサーバ1コアの1年間のサブスクリプションで42万円から。Windows環境向けは4種類のスキャンエンジン(パッケージ)とサーバ4コアの1年間のサブスクリプションで105万1800円から。最小構成の場合はクライアント25台まで利用できる。
橘氏は、発売初年度の販売目標を10案件以上とし、大企業の開発研究などの部門あるいは中小企業での採用を見込んでいると説明。「無害化」の新手法や多層型のマルウェア防御によるセキュリティの強化を企業に訴求していくとした。
「無害化」機能では15種類のファイルで悪質なコードなどを除去したり、ファイルタイプを変換したりできる