6月6日から4日間、中国・上海で開催されているテクノロジカンファレンス「CES Asia 2017」に、日本から本田技研工業(ホンダ)、パイオニア、ワコム、オーディオ・テクニカ、オンキヨーの5社が参加している。ホンダのブースでは、人工知能(AI)を軸にしたオープンイノベーションを中国でも展開するとし、メディアの注目を集めた。
ホンダは2016年の秋、研究開発を独自に進める「Honda R&D Innovation Lab Tokyo」を組織した。自社以外の専門家や研究者と協力し、技術者が実用化を前提にしたAIの研究開発を進めている。
今年4月には、世界規模でイノベーションを加速するための新会社「Honda R&D Innovations」を米シリコンバレーに設立。さらに、既存の二輪車や四輪車、パワープロダクツ、ジェットと切り離した「R&DセンターX」も同時に立ち上げ、ロボティクスとAIを中心に取り組んでいるという。
本田技術研究所の執行役員でR&DセンターX担当の脇谷勉氏
CES Asiaに設置したホンダの展示ブースには、中国メディアを中心に多くの記者が集まった。今回出展している、自動運転機能を持つEVコンセプトカー「NeuV(ニューヴィー)」や、ロボティクスの研究で得たバランス制御技術を応用した二輪車「Honda Riding Assist」など、プロトタイプの段階であるさまざまな技術を公開している。
ブースでスピーチした本田技術研究所の執行役員でR&DセンターX担当の脇谷勉氏は、ホンダが目指すゴールについて「生活の可能性を広げるという喜びを世界中の人に伝えること」と切り出した。ASIMOなどを引き合いに出しながら、それがホンダにとって新しいコンセプトではなく、これまでも人々を救うための技術の創造に注力してきたと強調している。センターXのXについては「まだわかっていないもの(unknown)」の意だと説明している。
「強みを持つ“MONO-ZUKURI”と、ハードウェアを含めた製品をつくるという芸術である“KOTO-ZUKURI”を組み合わせることによって、新たな価値の創造という目的の達成に取り組んでいく」(脇谷氏)
目玉となったNeuVは、AI技術である「感情エンジン」を搭載している。ドライバーの表情や声の調子からストレス状況を判断して安全運転をサポートしたり、ライフスタイルでの嗜好を学習して、状況に応じた選択肢を提案する。この技術はホンダが「HANA(Honda Automated Network Assistant)」と呼ぶもので、人間の意思決定の背後にある感情を探知し、その人の過去の行動をベースに、新たな選択肢を提示するという。
また、NeuVでは、使用しない時間があれば、自動運転で特定の場所に移動してライドシェアするなど、自動運転技術とAIによる新たなビジネスモデルの可能性も提示する。
ASIMOのバランス技術を二輪車に応用
もう1つ注目を集めたのは、ASIMOなどで蓄積したバランス制御技術を二輪車に応用したという実験車、Honda Riding Assistだ。
ライダーがいなくても自立する。多少バランスを崩したような場合も、バイク自体がバランスを保つ。低走行時や停止時のふらつき、取り回しの際の転倒リスクを軽減する。
人との調和を目指した新たな乗りもの
デモ担当者をHonda Riding Assistの前まで運んだのは、人との調和を目指すという新たな乗りものとして紹介した「UNI-CUB β」だ。人が行き交う空間でも使用できるパーソナルモビリティだと説明している。ROS(ロボットOS)対応のAPIを搭載しており、遠隔操作により無人で荷物を運ぶことなどもできる。
Mercedes-benz、BMW、Volkswagen、Hyundaiなど有力自動車メーカーのブースが構える中でも、ホンダブースを訪れる人は多く、注目度の高さを示していた。