この市場予測を発表する記者会見で、IDC Japanコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は、「ブロックチェーンが中長期的にデジタルトランスフォーメーション(DX)のカギとなり、IoT、機械学習などAIシステムと並ぶ、データ中心社会の中核技術の一つになっていく」と予測した。
IDC Japan コミュニケーションズ シニアマーケットアナリスト 小野陽子氏
この論拠は何か。小野氏はブロックチェーンの、「改ざんできない」「ゼロダウンタイム」などの特性が、企業間協業のための企業間データ共有に有効であり、第3のプラットフォーム技術(クラウド、ビッグデータ、モビリティ、ソーシャル)を利用して新たな価値を創造するDXで重要であると説明する。また、ブロックチェーン開発の基盤技術である「Fabric」「Iroha」はOSSを中心に展開しており、多様なエコシステムが発展する可能性があり、ニーズも多様であるからという。
さらに、ブロックチェーンの要素技術の一つである「スマートコントラクト」(契約の自動化)と、同じく成長が見込める「IoT」との相性の良さを挙げた。「条件と成果を暗号化したプログラム」であるスマートコントラクトをIoTデバイスに導入し、勘定の仕組みを持たせておけば、イベント駆動の仕組みを中央で管理することなく自動化できる。IoTの進化により、デバイス同士が通信することが予想されるが、それぞれの端末に勘定概念を持たせて仕事量分の対価が発生する場合などにも対応できる。
IoT分野でのスマートコントラクト
一方で、ブロックチェーンをビジネス領域に適用する課題をいくつか挙げた。仮想通貨の基盤技術として生まれたブロックチェーンには、「処理速度」「(技術者が足りないなど)スケーラビリティ不足」「決済がリアルタイムに確定できない」「データを柔軟に扱えない」といった機能、性能面での課題がある点を示した。これらについて、代替的なアルゴリズムの導入などの取り組みが進んでいるとした。
さらに、大規模な運用や長期的なライフサイクルに関する議論が不足していることも課題の1つとした。「既存システムをブロックチェーンで代替するには高いハードルがあり、置き換えられる技術やシステムなどを担う人材やサービスを考慮しながら進める必要がある」(小野氏)
しかし、ブロックチェーンに関するこのような課題の多くは、R&D活動や知見の蓄積によって、今後急速に解決されていくと予想した。
小野氏はブロックチェーンは、企業内よりも企業間の情報共有でメリットを生かせる点や、技術的な成熟度が低い点から、企業の中核システムよりも、周辺システムや新規分野から活用が始まると説明。情報システム部門は新たなビジネス貢献を目指す「攻めのIT」戦略の一環としてブロックチェーンをとらえ、活用を検討するべきと提言した。