3月、日本政府は「働き方改革実行計画」を決定した。その中には、同一労働同一賃金の原則や長時間労働の是正対策が盛り込まれている。
労働人口が減少し、グローバル競争力の低下が懸念される現状において企業は、従業員にある才能や資質、経歴などの“タレント”を把握し、最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を提供する必要がある。
「グローバルで従業員を抱える企業にとっては、標準化したタレントマネジメントシステムが必要不可欠だ」と力説するのは、米Cornerstone OnDemandでプレジデント兼最高経営責任者(CEO)を務めるAdam Miller(アダム・ミラー)氏である。
クラウドベースのタレントマジメントプラットフォームを提供する同社は、採用からトレーニング、業績評価や人的資源といった人材に関する管理システムを提供している。「日本のタレントマジメント市場は大きなポテンシャルを秘めている」と語るMiller氏。その戦略を聞いた。
「あれば便利」から「ないと困る」に
――タレントマジメントに対する企業の認識について教えてほしい。Cornerstone(の前身であるCyberU)設立の1999年と現在とでは、企業の認識はどのように変化しているか。
会社を設立した当初は、タレントマネジメントというコンセプト自体が存在しなかった。人材に対する企業の関心は、査定や特定の作業を習得するトレーニングの実施方法ぐらいだった。

Cornerstone OnDemandプレジデント兼CEO Adam Miller氏
タレントマネジメントが1つのカテゴリとして認識されたのは2005年。企業のラーニングを研究しているJosh Bersin氏が、「企業は従業員の学習やパフォーマンス、仕事の達成度合いといったタレントを一貫して捉えるべきだ」と提言したことが大きい。
2005年当時、多くの企業は人材に関するシステムを複数導入し、それぞれがサイロ化している状況だった。例えば、給与と査定は異なるシステムで運用されており、「1人の人材に関する情報を管理するのに、複数のシステムを利用しなければならない」という課題を抱えていた。
こうした状況から2008~2009年には「人材に関するシステムは一元管理されるべきだ」との認識が広がった。とはいえ、実際にシステムの統合から始まったのは2013年ごろだろう。ただし、この時は「Nice to have(あれば便利)」程度の“オプション”的な認識だった。
それが今では「人材の一元管理システムは不可欠」という認識に変化している。つまり、「Nice to have」から「Must to have(ないと困る)」な存在になった。
要件は際限がなく、技術も進化
――Cornerstoneでは「ラーニング(教育)」「HR(人的資源管理)」「パフォーマンス(業績評価管理)」「リクルーティング(採用)」の4つの分野で、それぞれ必要な機能を提供している。現在提供している機能でタレントマネジメントに必要な機能はすべてそろっていると考えているのか。
2006年ごろは「あと1年あればすべての機能がそろう」と考えていた。しかし10年経った今でも「すべての機能がそろっている」とは言えていない(笑)。なぜなら、タレントマネジメントに対する要件は際限がなく、(それを実現する)技術も進化しているからだ。
――つまり、変化に応じて必要な機能を追加していると。
その通りだ。また、タレントマネジメントを実施するプロセスも進化している。現在、われわれは「ラーニングエクスペリエンスプラットフォーム(学習体験を提供するプラットフォーム)」というコンセプトを掲げているが、5年前にはこうした概念自体が存在しなかった。
もう1つの要因は、ユーザーを取り巻く環境だ。その好例がモバイル活用だろう。5年前と比較し、あらゆるサービスはモバイルを通じて提供されるようになった。
また、ミレニアル世代と呼ばれる35歳以下のユーザーにとっては、オンデマンドで提供される「Netflix」やストリーミング配信「Spotify」の利用が当たり前になっている。つまり、「自分の欲しいサービスは自分で検索して入手する」といったスタイルだ。
時代の変化を鑑みれば、5年後に提供しているであろう機能は、現在提供している機能とはまったく異なるものになる。(こうした進化は)技術企業として嬉しい反面、常にチャレンジでもある。