グローバル企業でなくても人材の最適化は必要不可欠
――Cornerstoneを導入することで企業は、データに基づく人材管理が実現できることは理解した。反面、これまでの人材配置や昇進のあり方が大きく変化する可能性もある。導入企業には、既存の人材に関する慣習を変革する覚悟があると見ているか。
明確にしておきたいのが、われわれは「あなたがたはCornerstoneを導入すべきである」というスタンスで顧客に(サービスを)売り込んでいるわけではない。すべてのサービスや機能は、顧客からのためにある。そして、(それらを)導入するかどうか判断するのは顧客自身だ。
――タレントマネジメントの捉え方は、国や地域によって特徴があるのか。
タレントマネジメントが最初に普及したのは欧州で、米国、アジアと続いている。アジアの多くの企業では、いまだにシステムがサイロ化している状態だ。ただし今後は、アジアの企業も一元化したソリューションで人材を管理するようになると考えている。
日本市場においては、2つの理由から潜在的な需要があると確信している。1つ目は、多国籍企業の増加と従業員の多様性だ。特にグローバルでビジネスを展開する企業にとっては、(グローバルで)標準化したタレント管理システムを構築する必要がある。
2つ目は人材管理システムの導入でビジネス上のインパクトを出せることだ。グローバル企業でなくても、競争に勝つためには、人材の最適化が必要不可欠なのは言うまでもない。
――各スイートの利用状況を教えてほしい。
一番導入されているのがラーニングだ。顧客の85%が利用している。次いでパフォーマンスが52%、リクルートが20%と続いている。HR管理は新しいスイートなので5%程度の導入実績だが、今後はラーニングを導入している企業が(リクルーティングやHRも)段階的に導入していくと期待している。
――日本市場での導入状況はどのようになっているのか。
日本市場においてはラーニングとパフォーマンスが重要になると考えている。会社に対する“エンゲージメント”の高い従業員は、その他の従業員よりもパフォーマンスが高い。
エンゲージメントは、上司との良好なコミュニケーションや自らの仕事に対する理解や達成度、さらに会社の戦略と自分の(仕事で実現したい)ゴールが一致しているのかといったことが重要になる。従業員がエンゲージする環境を構築できるかは、企業の成長にとってカギとなる。自身のキャリアパスを自分で決定できる環境かどうかは従業員にとって(会社を選ぶ)大きな要素になる。
時代が変われば、パフォーマンスの基準も変わる
――日本では「働き方改革」が注目されている。10年後、従業員の働き方はどのように変化していると考えるか。
働き方にはトレンドがある。今のトレンドは「フレキシビリティ」だ。モバイルデバイスの普及やネットワーク環境の充実で、従業員はいつでもどこでも“一日中”働けるようになった。逆に、(リモートワークをしているフリをして)サボろうと思えば、いくらでもサボれる(笑)。
Cornerstoneでは有給休暇の取得制限日数を設けず、「無制限の休暇」を提供している。クレイジーだと言われているが、従業員が働きやすい(フレキシブルな)環境を提供しなければ、持っている能力を発揮して仕事をしてもらえない。
もう1つのトレンドは、労働需要に応じて人材を配置する「オンデマンドワークフォース」だろう。Uberに代表されるように、仕事の需要があるときに仕事をしたい人が働く環境だ。実際、季節や特定の時期だけ仕事が集中する企業を中心に「オンデマンドワークフォース」に対するニーズは増えている。
前述した通り、今はネットワークとモバイルデバイスさえあれば、どこでも仕事ができる。そうした環境において企業は「どの従業員が、どれだけのパフォーマンスを発揮したか」を客観的に測定できるシステムが不可欠になる。たとえ、20年前と同じ職種であっても、当時と同じ基準で従業員のパフォーマンスを評価できると考えるのはまちがいだ。
これは将来にも同じことが言える。同じ職種であっても10年後には働き方も仕事内容、そして従業員に求められるスキルは異なってくる。技術の進歩と社会を取り巻く環境は変化している。
そうした環境に適用するためには、トレーニングが必要だ。タレントマネジメントは企業にとって不可欠であり、Cornerstoneにとっては大きなビジネスチャンスであると考えている。

「携帯電話1台と数人の友人で会社をスタートさせた」と語るMiller氏。今では世界191カ国でビジネスを展開。導入企業は3000社、ユーザー数は3100万人に上る