コーナーストーンオンデマンドジャパンは、2017年の日本での事業方針を発表した。同社はタレントマネジメントの機能をSaaSで提供している。日本ではタレントマネジメントはなかなか定着しない分野のひとつ。カントリーゼネラルマネージャーの飯島淳一氏は「2017年はタレントマネジメント元年にしたい」と日本市場定着に意欲を見せる。
それを実現するために、すでに同社のSaaSを導入している企業に成果をきちんと計測して顧客満足度向上を進める。注力領域としては従業員数3000人以上で、グローバルに展開している製造、流通、金融をターゲット業種とする。
タレントマネジメントがどのように経営にプラスになるかを広めていくために、経営層の視点でアドバイスできる人材を揃えたアドバイザリーボードの設立を設立し、経営層にアピールしていく。
「日本企業は給与管理は行っているが、人材を戦略的に活用するための仕組みを持っていないことが多い。最近は、人事任せにせず、自ら魅力ある企業作りに取り組む経営層が出てきている。グローバルな人材雇用、ミレニアム世代のような新しい価値観を持った人材の活用など企業が抱えている課題に取り組むために、人材を戦略的に活用できるタレントマネジメントの重要性を訴えていきたい」(飯島氏)
テクノロジが欠かせない
Cornerstone OnDemandは1999年にサンタモニカで創業。「グローバルに展開しており、3000社、3000万人の顧客を持ち、日本語をはじめ42カ国語に対応している」(飯島氏)。日本では日立製作所や日産自動車、リコー、キヤノンなどが導入している。
同社が提供するタレントマネジメントシステムの特徴は、クラウドベースで「ラーニング(教育)」を中心に置いて「リクルーティング(採用)」「オンボーディング(職場導入支援)」「コネクト(社内ソーシャル)」「パフォーマンス(業績管理)」「コンベンセーション(報酬管理)」「サクセッション(後継者育成)」、従業員データを管理する「コーナーストーンHR」、人材を分析する「アナリティクス」というモジュールで構成されている。
企業の人事に関する全工程をモジュールとして自社開発し、全てを連携できるシングルコアアーキテクチャであることが特徴となっている。
「これまで日本の人材管理は年に一度、上長と面接して終了というスタイルだった。当社が提供するのは、個々の従業員の様子を見守り、その人が進むべきキャリアをアドバイスし、望む方向にキャリアアップするためにどんなスキルが必要かアドバイスする。企業にとっても、個人にとってもプラスとなることを目指している」(飯島氏)
日本ではタレントマネジメントが定着していないことから、2017年の日本での事業戦略としては、同社のサービスを導入したことできちんと成果が上がっていることを明示していく。
「顧客満足度が高くなければ、われわれの成功はない。顧客満足度向上のためにわれわれのソリューションの活用方法、定着のための方法の提示などグローバル一体で支援していく」(飯島氏)
成功事例を明確に示していくために、2017年は従業員3000人以上でグローバルに展開している製造や流通、金融を中心に顧客獲得を進める。クラウドであることから利用できる企業規模は問わないものの、まず大企業に導入して日本にタレントマネジメントを定着させる方針だ。
経営層に導入のメリットを訴えると効果が高いことから、経営者視点で導入メリットをアピールすることができる人材として、InterBusiness社長の野口芳延氏、元セールスフォース・ドットコム代表取締役社長の宇陀栄次氏、日立製作所の人事勤労部門で人事管理を担当した元日立総合経営研修所取締役社長の山口岳男氏の3人をアドバイザリーボードに起用した。
野口氏は、1977年に米IBMに入社後、米国企業の日本法人、自身でベンチャー企業を創業するなど日本、米国で経営に携わってきた。
「日本企業は人材に関し、各国の現地法人に任せることが多かった。グローバルにビジネスを展開するためにまずやるべきは人材の棚卸し。どんな人材が何人いて、優秀なのは誰かを明確化する。本社で各国にどんな人材がいるのかわからないという状況ではまずい。その上でビジネス戦略に適した人材を登用し、ビジネスを進めていくべき。それをサポートすることができるのがコーナーストーンのテクノロジだと考え、今回、アドバイザリーボードに加わることを決めた」(野口氏)
宇陀氏はセールスフォースで日本でクラウドビジネスを定着させた経験を持つ。
「中小企業の活性化が日本には欠かせないと実感しているが、実は過去5年で125万社の中小企業が廃業している。要因の一つが後継者がいないこと。良い会社でお客さまを持っているにもかかわらず、後継者がいないために廃業する企業もある。これは日本経済にとって大きなマイナスであり、クラウドを活用することで適した人材を後継者に登用することができるのではないかと考えている」(宇陀氏)
山口氏は日立製作所で人事管理業務に従事した経験をもつ。日立自身がコーナーストーンを導入していることから、人事部門でタレントマネジメントの有用性を実感した体験を持っている。
「グローバル規模で最適な人事業務を進めるためにはテクノロジが欠かせないことを痛切に感じた。ただし、本気で取り組もうとすればお金がかかる。日立の場合は中西(宏明氏=日立製作所取締役会長兼代表執行役)さんという強いリーダーがいてHRテックの仕組みを導入できた」(山口氏)
人事や経営にこうした知見を持つアドバイザリーボードメンバーとともに人事部門と経営層に働きかけて、日本でのタレントマネジメント定着を目指していく。
(左から)宇陀栄次氏、野口芳延氏、飯島淳一氏、山口岳男氏