グラフ構造のデータを高速検索するグラフ型データベース「Neo4j」の勘所

長瀬嘉秀 (Neo4jユーザーグループ) 案浦浩二 (Neo4jユーザーグループ)

2015-04-20 16:30

グラフ型データベースとは

 グラフ型データベースとは、グラフ構造を持ったデータベースで、データの構造が従来のリレーショナルでなく、ネットワーク状になっている場合に、検索などの機能で効力を発揮いたします。

 例えば、ネットワークシステムを考えた時に、ネットワーク装置とネットワークのケーブルで構成されています。どの装置に、何本かのケーブルがつながれていて、さらにその先に装置がつながれているということを管理します。

 ネットワークには、膨大な装置やネットワークケーブルがつながれていて、これを従来のデータベースで管理するのは困難です。さらに、どこかの装置が故障した時に、ネットワークは別のルートを探さなければならないかもしれません。

 このようなデータ管理には、グラフ型データベースが得意とするところです。もちろん、装置などの数は数千万に及ぶので、従来のデータベースでは、検索スピードなどを考えると構築は難しいでしょう。

 他には、地図上で道と交差点があり、ある地点から目的地までの最短距離を探すときにも、このグラフ型データベースが有効です。工事中で道が通れなかったり、交通渋滞で遅延を考慮したりするなど、かなり複雑な計算を要します。

 このような構造はグラフ理論として、数学では扱われています。今までは、グラフ理論を手軽に実装できる環境がありませんでしたが、NoSQLなどデータベース製品の台頭でようやく手に入れることができるようになりました。

グラフの仕組み

 グラフ構造はどのような要素で構成されているかを説明していきます。グラフの基本的な要素は、ノードとコネクションです。コネクションというのは、ノード間をつなぐリレーションになります。

 ネットワークシステムでは、装置がノードになり、ケーブルがリレーションです。もちろん、物理的な意味ではなく、装置が持つ情報、ケーブルに相当するノードをつなぐ情報がそれぞれノードとリレーションになるわけです。

図1:グラフ型データベースの基本要素
図1:グラフ型データベースの基本要素

 ノードとリレーションは数千万にのぼり、膨大な情報量になります。この情報をグラフ型データベースは瞬時に検索できるのです。さらに、リレーショナルデータベース(RDB)のJoinに似たようなクエリを用意して、検索処理を記述します。クエリは複雑な検索もできるように設計されています。

 グラフ型データベースの設計では、データモデリングのER図やオブジェクトモデルのUMLとの共通点もあり、従来のデータベース設計者にとって、入りやすい側面を持っています。グラフのノードはエンティティであり、ノードには属性をプロパティとして定義できます。よって、従来のデータモデルのエンティティがノードに、関連がリレーションになったりするわけです。グラフ型データベースの基本要素を図1に表します。

インスタンスモデル

 グラフ型データベースを設計する上で、重要なのがインスタンスモデルです。インスタンスモデルとは、具体的なインスタンス(値を持ったオブジェクト)で考えていくことです。

 データモデルやオブジェクトモデルでは、インスタンスを考えず、いきなり抽象概念でモデリングすることが多いのですが、グラフ型では、インスタンスモデルを頻繁に考えていきます。開発プロセス的にみると、抽象概念から落としていくのが従来からのウォーターフォールで、インスタンスから考えるのは、テスト駆動開発を行うアジャイル開発のようなものです。それでは、具体的なインスタンスモデルを見てみましょう。

図2:インスタンスモデル
図2:インスタンスモデル

 この例は映画と出演者、監督、レビューアなどの関係を示したデータベースです。内容は、Neo4jの命名の由来でもある『The Matrix(邦題:マトリックス)』という映画の中の登場人物をモデル化しています。

 ノードになっているのは、登場人物です。そして、リレーションには、関連名や期間などがプロパティとして設定されています。例えば、Neoとして知られる主人公は、名前としてKeanu Reeves、年齢は29歳です。そして、次のノードであるTrinityとの関係はLOVESで3日です。このように、実際の値を入れて作成してくのがインスタンスモデルです。

 この程度のノード数であれば、人が見ても探せますが、これが数千万という数になってしまうと、コンピュータのデータベースシステムでないと対応できません。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. ビジネスアプリケーション

    生成 AI 「Gemini」活用メリット、職種別・役職別のプロンプトも一挙に紹介

  2. セキュリティ

    まずは“交渉術”を磨くこと!情報セキュリティ担当者の使命を果たすための必須事項とは

  3. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  4. セキュリティ

    マンガで分かる「クラウド型WAF」の特徴と仕組み、有効活用するポイントも解説

  5. ビジネスアプリケーション

    急速に進むIT運用におけるAI・生成AIの活用--実態調査から見るユーザー企業の課題と将来展望

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]