報道の自由を守るには--The New York Timesの新セキュリティ責任者に聞く - (page 3)

--あなたのような経歴の人が、The New York Timesの重要な地位につくのは珍しいことです。このことは、企業としてのThe New York Timesにどのような影響を与えると思いますか。

　わたしは1991年に、金融レポートの印刷と配布を行う会社でプリンタを修理する仕事に就きました。その後PCの技術者になり、サーバのサポートを担当し、（セキュリティ運用センターの）アナリストになり、エンジニアになり、それからマネジメントの世界に入りました。わたしは、自分の技術的な知識と、プロセスを定義し、標準を設定し、チームのやる気を出させる能力が、この役目を果たす上で役に立ってくれると考えています。もしわたしが成功すれば、非常に熟練したチームと、コンテンツを生み出したり、スタッフや資産を守る上で、セキュリティチームと協力することが重要だと考える企業文化が生まれるはずです。

--これはセキュリティに限った話ではありませんが、今回の役割を果たす上で、あなたの自信の元になっているのは何ですか？もちろん、ハッカーからの挑戦を受けたいわけではないと思いますが。

　わたしの自信の元になっているのは、優れたチームを作るための人材がそろっており、経営チームと、当社のブランドに誇りを持つやる気に満ちた社員が、この役目の重要性を理解していることです。これらの条件がそろっていれば、わたしの仕事である、計画を実行する部分は簡単です。

--あなたのような立場に就こうとしている人に何か助言するとすれば、最初に言いたいことは何ですか。

　技術畑の人が身につけることが難しいスキルの1つが、謙虚さです。わたしのような経歴の人が、個人的な成功を追求しようとして失敗した例がいくつもあります。ほかの人に刺激を与えて、成功に導くことができれば、計り知れないほどの成果が得られます。その逆に、自分のエゴを優先してほかの人の足を引っ張っても、何もよいものは生まれません。

--情報セキュリティチームを戦略的に再編するために、人材を募集していると聞きました。どのような役職、あるいはスキルセットを持つ人材を採用しようとしているのですか。

　技術的な能力は、事前の面接で簡単に吟味できます。われわれが必要としているのは、この仕事に本当に情熱を持っているセキュリティプロフェッショナルです。積極的に人的なネットワークを作り、知識を広げ、困難な問題を多角的に検討できる人を求めています。また、当社のブランドやスタッフに献身的で、創造的な思考ができる人材を必要としています。わたしは、チームのスタッフがBlack Hatで発表を行い、部屋いっぱいに参加者を集められるようにしたいと考えています。わたしの役目はチームを作ることであり、個人を雇うことではありません。

--最後に、The New York Timesとは関係なく、個人的な見方として、現在の脅威に関してもっとも懸念していることは何ですか？

　ここでは個人の立場でお話ししましょう。テクノロジが進歩すれば、それだけ個人が社会に損害を与えることが容易になります。わたしは、2年ほど前にCharlie Miller氏とChris Valasek氏がJeepをハッキングしたプレゼンテーションを見て、自動車や、ペースメーカーや、スマートホームや、電力網や、投票ブースや、核燃料施設の遠心分離機などについて考えたのを覚えています。

　サイバー戦争の問題まで考えれば、個人や国に非常に何らかの重大な問題が起きる可能性は恐ろしいものだと感じています。