NECは、マングローブなどの“グリーンインフラ”を活用した減災効果を検証、評価する「沿岸災害シミュレーションシステム」の研究開発を開始した。7月7日に発表した。
同研究は、独立行政法人環境再生保全機構の「環境研究総合推進費」で実施する。京都大学、国立研究開発法人国立環境研究所、東北学院大学、茨城大学、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所と共同で進める。
グリーンインフラとは、自然環境の有する多様な機能をインフラ整備に活用するという考え方。コンクリート構造物の代替や補足の手段として使うことで自然環境保全や景観維持などの効果も期待できるという。
今回の共同研究では、過去に発生した気候変動の影響を踏まえ、台風発達から沿岸部までの大気や高潮、波浪の状況を同時に評価する災害予測モデルを開発し、グリーンインフラによる減災効果を検証、評価するための高解像度な海面変動モデルを開発する。
マングローブの生態系分布調査や水理模型実験により、生理的・物理的特性を数値化したモデルを開発し、海面変動モデルなどと組み合わせ、スーパーコンピュータ上で高速計算を実行し、沖合から沿岸までの減災効果を定量的に検証、評価する。
(左から)台風や高潮、波浪の結合評価モデル(京都大学提供)とマングローブ林のグリーンインフラ(国立環境研究所提供)
海洋研究開発機構の「地球シミュレータ」などを使用し、グリーンインフラに防波堤などのコンクリート構造物(グレーインフラ)を加えた場合の減災効果を検証する。これらの取り組みにより、グリーンインフラとグレーインフラの効果的な組み合わせを中長期的に評価する仕組みを構築していく。
各研究参加機関の主な役割として、京都大学は、温暖化による台風増加と沿岸ハザードを評価。国立環境研究所は、マングローブ分布と機能評価に関する研究、東北学院大学は、マングローブ波浪低減効果を把握する。茨城大学では、グリーンインフラによる減災効果について、港湾空港技術研究所は、ライフサイクルを考慮したグリーンインフラとグレーインフラの効果的な組み合わせを研究していく。
NECは、スパコン技術の適用によるシミュレーション高度化を担当する。スパコンの利用技術やノウハウを生かし、沿岸災害のシミュレーションモデルを実装することで、高速かつ効率的に実行していく。具体的には、フィリピンの特定地域を対象にシミュレーションを実行し、沖合から沿岸までの減災効果を定量的に検証、評価する。