Googleは米国時間8月23日、「Google Cloud Platform」(GCP)の顧客に対し、「Network Service Tiers」として2種類のネットワークサービス層を提供すると発表した。これにより同社は、大手のパブリッククラウドベンダーとして初めて、グローバルネットワークサービスを利用する高品位のサービスか、低価格のサービスかを選択できる柔軟性を顧客にもたらす。
Network Service Tiersは現在のところアルファ段階となっており、次の2種類のサービスが用意されている。「Premium Tier」は「Google Cloud」を支える同社のグローバルネットワークを使用するサービスだ。一方「Standard Tier」はより低価格なサービスであり、Googleによると他のパブリッククラウドと肩を並べるパフォーマンスを提供するという。
Googleのテクニカルインフラ担当シニアバイスプレジデントであるUrs Hölzle氏は今回の発表で「われわれはこれまでの18年間で世界最大のネットワークを作り上げており、今ではインターネットトラフィック全体に占める割合が25~30%にのぼっているという報告もある」と述べるとともに、「Premium Tierではこれと同じインフラを利用できる。しかし、パフォーマンスが低くてもより低価格のサービスの方が望ましいというユースケースもあるはずだ。Network Service Tiersにより、アプリケーション単位に最適なネットワークを選択できるようになる」と述べている。
Premium Tierのネットワークは、世界100カ所以上の接続拠点(POP:Point Of Presence)を結ぶ、Googleの大規模プライベートファイバーネットワークで構築されている。Google Cloudへのインバウンドトラフィックは、エンドユーザーに最も近いPOPからGoogleのネットワークに入り、プライベートネットワークを通じて企業のアプリケーションのもとに送り届けられる。同様に、アウトバウンドトラフィックもプライベートネットワークを通じて最寄りのPOPまで送り出される。
Premium Tierではパフォーマンスのさらなる向上を実現するために、Googleネットワーク上の任意の2点間を結ぶ経路を少なくとも3つ確保し、冗長性を高めることでパケット損失の影響を低減している。また、Premium Tierはグローバルな負荷分散(GLB:Global Load Balancing)を特長としてもいる。
Standard Tierは、Googleのネットワークに加えて、トランジットネットワーク(ISPのネットワーク)も併用するため、低価格なものとなる。
アウトバウンドトラフィックはGCPから(ISPの)ネットワークに引き渡される。その一方、エンドユーザーからGCPに到来するインバウンドトラフィックは、その到達先が存在するリージョン内でのみGoogleのネットワークを通過することになる。つまり、トラフィックが別のリージョンから到来する場合、該当トラフィックは最初にISPのトランジットネットワークを通過することになる。
Googleによると、Standard Tierの輻輳(ふくそう)やサービスの中断は他社のパブリッククラウドと同程度になるという。一方、負荷分散用の仮想IP(VIP)アドレスといったネットワークサービスは、Standard Tierではリージョンベースでのみ利用可能だという。
GoogleはStandard TierとPremium Tierの違いを示す例として、Premium TierとStandard TierそれぞれにおけるHTTPトラフィックの負荷分散状況の50パーセンタイル値(中央値)を表示したCedexisのライブダッシュボードの画面を引用している。なお、Cedexisはインターネットパフォーマンスの監視や最適化のためのツールを手がける企業だ。
Network Service Tiersの一般提供が開始された暁には、北米地域や欧州地域の場合、Standard Tierのアウトバウンドトラフィック料金はPremium Tier料金よりも24〜33%低いものになるという。Premium Tierの通信先に基づく価格は、トラフィックの送信元と宛先の双方に基づいて決定される。その一方、Standard Tierの価格は、該当トラフィックがGoogleのネットワークをさほど使用しないため、送信元に基づいて決定される。アルファ段階とベータ段階にある間は、既存のインターネット下り料金が適用される。また顧客は、ワークロード毎に異なるサービス層を選択することもできる。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。