調査

低コストのハッキングツールがサイバー犯罪を助長--SecureWorks

Asha McLean (ZDNET.com) 翻訳校正: 矢倉美登里 吉武稔夫 (ガリレオ) 編集部

2017-09-24 08:00

 SecureWorksの調査レポートによると、サービスとしてのマルウェアや、スパム用のボットネットが簡単に利用できるようになった結果、サイバー犯罪の敷居が低くなっているという。

 SecureWorksの脅威対策部門は、2017年版の「State of Cybercrime Report: Exposing the threats, techniques and markets that fuel the economy of cybercriminals」(サイバー犯罪の状況報告:その脅威と技術、そしてサイバー犯罪者たちの経済を活性化する市場について)において、経験の浅いハッカーらが情報を窃盗するマルウェアを比較的安価に購入できるようになった結果、オンライン犯罪者が増加していると説明している。

 同レポートには「インターネットにおける闇の世界では、その場で購入できるマルウェアが広く流通しており、地下フォーラムに行けば未熟な、すなわちスキルの低いサイバー犯罪者でも比較的安価に情報窃盗マルウェアを購入できる。そういったマルウェアの多くは、コンパイル済みバイナリの形態や、攻撃者がコンフィギュレーションをカスタマイズして独自のバイナリを作成するような高性能なビルドキットの形態を採っている」と記されている

 同様に、SecureWorksがあらゆる「ウェア」の拡散に最もよく利用される方法だと指摘するスパムボットネットは、駆け出しのサイバー犯罪者でも低価格で簡単に利用できるという。

 「サイバー犯罪者は今、大規模なボットネットを利用して、飛躍的にスパムの拡散を拡大することができる。『spam as a service』(サービスとしてのスパム)と考えてもいい製品だ」とSecureWorksの報告書には書かれている。

 報告書はその一例として、大規模なスパムボットネット「Kelihos」が、医薬品や偽造品を宣伝するタイプのメッセージを電子メール100万件あたりわずか200ドルのコストで送信した件を挙げている。

 個人情報は依然として人気商品で、テストされ認証されたクレジットカードデータが、わずか10ドルで手に入る場合もあり、かなり詳細な個人情報の記録も10ドルで提供されている、とSecureWorksは指摘している。

 報告書は、SecureWorksの調査に基づく11の主要な調査結果について詳述している。だが、「WannaCry」や「Petya」といったマルウェアやランサムウェアの急増に加えて、「ビジネスメール詐欺」(BEC)も、2013年10月~2016年6月に世界中で50億ドルの損害を与えており、オンライン犯罪が独自の市場経済と化していることをSecureWorksは浮き彫りにしている。

 サイバー犯罪による世界全体の経済的損害を数値で示すのは難しいが、SecureWorksは米連邦捜査局(FBI)の報告書を挙げ、2016年にはインターネット犯罪による損害額が13億ドル(PDF)を超えたと述べている。

 SecureWorksの報告書は、オンライン犯罪の現状は複雑で、多種多様な能力の持ち主が絡んでいると指摘する。

 SecureWorksが定義しているように、アンダーグラウンドインターネットとは、サイバー犯罪者が利用している掲示板やオンラインショップ、チャットルームの集まりであり、そこでは犯罪者たちが手を組んだり、ツールやテクニックを売買したり、詳細な銀行口座情報や個人を特定できる情報などが含まれた盗難データを販売したりしている。

 だが、SecureWorksは、このアンダーグラウンドインターネットを通じて見ただけでは、サイバー犯罪の全体像は見えないとしている。

 「金になるオンライン犯罪は、事業化され、リスクを最小限に抑えて利益を最大化することを第一に考える犯罪組織によって管理されている。こうした組織は勢力範囲が広く、もっと従来からある他の犯罪分野で活動していることも多い。必要なら、金や物を世界規模で動かすといった、特定の分野を専門とする他の職業的犯罪者のサービスを利用する」(SecureWorks)

 サイバー犯罪組織はその資金力で、まともな組織が雇うよりも先に優秀なセキュリティ人材をかき集められることが多い。その影響で、アンダーグラウンドの求人市場が生まれ、SecureWorksによると、そこでは主に、マルウェアやインジェクションの作成、データ処理、ネットワークやシステムの管理、ネットワークの脆弱性悪用といったスキルや、脆弱性攻撃ツール(エクスプロイトキット)のローディングを行うベンダーが主に求められているという。

 「中間者」が承知の上で、あるいはそれと知らずにデータを受け取ってサイバー犯罪者に送る「マネーミュール」も、オンライン犯罪の現状において重要な役割を果たし続けている、と報告書で説明されている。

 SecureWorksは、行為者と能力の点で、犯罪行為と国家との距離が縮小し続けると述べ、バングラデシュの銀行から8100万ドルが盗まれた事件北朝鮮の関与が疑われている件を例に挙げた。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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