デルとEMCジャパン(Dell EMC)は10月20日、社内にいるIT担当者が1人以下のいわゆる“ひとり情シス”に悩む中堅企業を対象とした新たな支援策の提供を始めた。併せて、ひとり情シスの実態を分析した調査結果も発表している。
新たな支援策は、(1)「ひとり情シスコミュニティ」サイト、(2)「ひとり情シス大学」、(3)ひとり情シス業務の「可視化・定額型サポートメニュー」、(4)ひとり情シス向け「終活ソリューション」――の4つである。
デル 執行役員 広域営業統括本部長の清水博氏
ひとり情シスコミュニティは、Dell EMCの顧客同士が情報交換するためのコミュニティーサイト。日常のIT運用で起こり得る問題を質問して回答を受け取ることができる。
業務過多で外部コミュニティーへの参加が難しいひとり情シス状態の担当者に、オンラインコミュニティーを活用した質問や情報交換の場の提供する。ユーザー会の開催なども予定している。
ひとり情シス大学は、IT技術動向の理解から評価や目利きができるように技術とスキルを習得する学習サイトだ。Dell EMCの顧客は無料で利用可能。クライアントやサーバ、ネットワーク、クラウド、セキュリティなどの技術スキルや、経営層への交渉、ベンダー管理などのコミュニケーション、IT資産管理、セキュリティガイドラインなどのITガバナンスなどを学べる。
全150講座のカリキュラムを提供予定で、初級編が18科目(90講座)、応用編が12科目(60講座)となっている。動画を視聴しながら学習を進めていく。初級編を2018年4月から半年かけて順次提供していく。各科目の受講後に習熟試験を実施して点数によって単位を授与したり、初級編や応用編の完了時に修了試験を実施したりできる。
経営企画や事業部門から異動となったがIT知識がない、勉強会やセミナーへの参加が難しく情報不足になりやすい、最新技術を体系的かつ継続的に学び続ける環境がないといった課題の支援を狙っている。
ひとり情シス大学のカリキュラムマップ(出典:Dell EMC)
可視化・定額型サポートメニューは、ひとり情シスの業務を可視化し、サーバ管理やクライアント管理、トラブル対応、インフラ導入・改修などの業務を定額で支援するサービスである。
業務内容がブラックボックス化して、自らで抱え込んで対応を試みるのではなく、業務を洗い出し、IT運用を常に外部に頼めるようにしておく必要がある。BIOS設定やネットワーク設定、プリンタ設定、ソフトウェア更新といった日常業務から、障害対応やセキュリティインシデント対応、ユーザー権限の変更といった突発的業務などを定額メニュー化して提供する。
情シス業務の可視化・定額型サポートメニュー(出典:Dell EMC)
終活ソリューションは、システム設計書や構成図の最新化、システムやデータ復旧の仕組化といった社内ITの環境把握や現状復旧、業務継続、運用維持を支援するもの。担当者の引き継ぎや社内ITの情報管理を円滑化、透明化することを目的とし、異動や引き抜き、長期離脱など、ひとり情シス状態だからこそ起こるリスクに対処する。
「ITの終活は決して後ろ向きではない」(インフラストラクチャ・ソリューションズ事業本部広域営業部部長の木村佳博氏)と狙いを説明する。盆や正月などの大型連休でもなかなか休みを取ることができない状況を打破し、トラブル発生時にもネットワークなどを含んでシステム復旧ができる環境を整えておく必要があるとした。
中堅企業の約3割がひとり情シス企業
Dell EMCでは、2016年末から中堅企業を対象に、IT投資動向調査、バックアップ関連調査、仮想化動向調査を実施。そこからひとり情シスの状態に悩む中堅企業を対象として分析し、課題を明らかにした。
現在、国内の中堅企業(従業員数100人以上1000人未満)約4万7000社の3割にあたる約1万4000社において、企業のITを一人で支えているのが実態となっている。ますます深刻になるIT人材の不足により、中堅企業においてひとり情シスの状態が今後も増え続けると予測されている。
ひとり情シス大学の校長を装う木村佳博氏
調査で分かったひとり情シス企業の特徴は次の通り。
- 従業員の増員計画は、ひとり情シス企業が一般企業に比べて多い傾向(ひとり情シス企業41%、一般企業33%)にあり、IT担当者の負荷の高止まりが避けられない状況
- IT予算の決定サイクルは、ひとり情シス企業が一般企業に比べて、突発的に決定するケースが多く(ひとり情シス企業46%、一般企業22%)、中長期的なIT戦略の策定が難しい状況
- サーバ仮想化は、ひとり情シス企業の55.5%が活用していないと回答(一般企業でも27.1%の企業が未活用)。また、保有しているサーバ全てを仮想化している企業は、わずか2%にとどまっている状況(一般企業でも3%にとどまる)で、仮想化によるメリットをほとんど享受できていない
- バックアップは、ひとり情シス企業の54.3%がシステムやデータの復旧に自信なしと回答。最新のバックアップ技術の情報収集や導入のための時間確保ができていない状況にあると想定
- 海外展開の取り組みと計画は、ひとり情シス企業が一般企業に比べて低い傾向にあるものの、41%の企業が対応を進めており(一般企業は59%が対応中)、IT資産の棚卸しが必須
今回の調査実施の背景について、木村氏は「今後も増え続ける“ひとり情シス”にフォーカスを当てた分析を深掘りすることで、課題解決策の糸口を導き出したかった」と説明した。