1982年設立のデータ・アプリケーション(DAL)は電子データ交換(EDI)製品「ACMS」シリーズを開発、提供している。企業間EDI専用サーバ「ACMS B2B」がJCAや全銀BSC、全銀TCP/IPなどの従来型EDIから流通ビジネスメッセージ標準(Business Message Standard:BMS)などの新世代EDIに対応しており、同社の主力製品になっている。
このEDIを取り巻く状況は大きな変化を見せようとしている。
固定電話網のIP網への移行計画が正式なものとなり、ISDNのデジタルデータ通信など一部サービスが終了することになっている。具体的には、「INSネット ディジタル通信モード」(INSネット64/INSネット64・ライト/INSネット1500のサービス名で提供)が2024年1月に終了する。「2024年問題」とも言える大きな変化だ。
この状況の変化にどう対応するのか。同社代表取締役社長執行役員の武田好修氏に話を聞いた。
クラウドへの移行が懸念材料
――事業概況について教えてください。
2017年3月期は、公共関連の大型案件に支えられ、3期連続増収を達成しました。2018年3月期については、前年度のような特需がないため、減収減益を見込んでいます。ただ、その中でも利益水準は5億円をキープする計画で、現在まで順調に推移しています。
主力製品の「ACMS B2B」が製品売り上げの約6割を占めているのが現状です。2016年6月にリリースしたエンタープライズデータ連携基盤の「ACMS Apex」は発売から1年が経ったところですが、順調な滑り出しを見せています。2017年度は、新たな市場への価値訴求を強化して、ACMS Apexの普及拡大を図っていきます。
――固定電話網からIP網に移行するスケジュールが発表されました。IP網への移行は、DALにとってはビジネスチャンスになるとお考えですか?
データ・アプリケーション 代表取締役社長 執行役員 武田好修氏
短期的にはビジネスチャンスだと感じています。固定電話網を利用したJCA、全銀BSC、全銀TCP/IPといった従来型のEDI環境が使えなくなり、インターネットEDIへの移行が必須になるため、既存製品からの切り替えニーズが期待できます。
しかし、その一方で、オンプレミス環境からクラウドへの移行が進んでいる現状もあります。従来型のEDI環境はオンプレミスで自社運用する企業がほとんどでしたが、インターネットEDIはセキュリティ面の不安が大きく、自社運用ではなく、サービスプロバイダーに任せた方が安心という流れが強まりつつあります。このため、長期的に見ると、オンプレミスからクラウドへの移行は懸念材料であり、当社にとっては痛しかゆしというのが本音です。
――インターネットEDIの自社運用にはセキュリティリスクが大きいと。
システム障害やトラブルなどで、メールやウェブのサービスが止まっても、それほど業務に影響は出ませんが、EDIの受発注が止まってしまった場合、商品を仕入れられなくなり、多大な機会損失が生じる危険性があります。
この点で、特に流通業界では、インターネットEDIの自社運用に不安を感じています。実際に、大手流通会社がオンプレミスのEDI環境から、クラウドサービスに移行した事例も出ています。今後、流通業界だけでなく、他の業界でもクラウドへの移行が進んでいくのでないかと予測しています。
――クラウドEDIのサービスを自社で提供するというお考えはありますか?
それはありません。現在、当社のEDI製品を使ってビジネスをしているパートナー企業に対して、競合になるようなサービスを提供することはできませんから。ただ、インターネットEDIの運用で不安に感じている部分をサービスとして提供できると思っています。
例えば、インターネットEDIに移行する際には、新たな運用技術者を自社で用意する必要があり、この部分も大きな負担になってきます。そこで、当社としては、インターネットEDIの運用代行サービスや監視サービスなど、安心して自社運用できる周辺サービスを提供することでオンプレミスEDIのお客さまを維持していきたいと考えています。