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固定電話のIP移行「2024年問題」は商機:データ・アプリケーション - (page 2)

田中好伸 (編集部) 唐澤正和

2017-12-14 15:45

多品種少量の取引にあわない従来型EDI

――流通業者としては、まだ十分に使えている既存のEDI環境をインターネットEDIに切り替えるのは、コストがかかるだけで、メリットがあるのか疑問という声も聞こえてきます。こうした業界の動きをどう見ていますか。

 確かに、流通業者からすれば、インターネットEDIに切り替えるメリットがあまり感じられないので、まだ7~8割の企業が従来型EDIをそのまま使い続けています。

データ・アプリケーション 代表取締役社長 執行役員 武田好修氏

 しかし、固定電話網を利用した従来型EDIは、インターネットEDIに比べて通信速度が遅い上に通信に必要なモデムは高額で、供給ベンダーも2社程度しか残っていません。そして、システム自体が老朽化してきているので、いつまでも使い続けるのは不可能であり、早かれ遅かれインターネットEDIへの切り替えは避けては通れないのが現実です。

 さらに、現在の流通業界は少量多品種の商品取引が中心になっています。コンビニやドラッグストア、総合スーパーなどでは、取り扱う商品が多岐にわたります。取引先についても、製造業では、部品メーカーを含めても多くても500社程度ですが、小売業では何千、何万になるケースもあります。

 その中で、従来型EDIは1日1回程度の通信を前提にした手順になっており、本来は複数回の通信はできない設定です。こうした手順の古さを現場での人間的な処理でカバーしながら使い続けているのが実状で、手間がかかる不合理なやり方でも“使えているから問題ない”という保守的な考えになっているのです。

 このような状況から、流通業者がインターネットEDIに移行することは、通信速度が高速化するという点で大きなメリットがあると考えています。例えば、従来型のEDI環境で少量多品種の商品を都度受発注する場合、データボリュームが増大し、通信にかなりの時間がかかります。

 一方、インターネットEDIであれば、短時間にデータ通信でき、発注業務全体の効率化にもつながります。流通業界の将来を見据えれば、やはりインターネットEDIに移行するのが理想の姿だと思います。

――インターネットEDIへの移行は、長期的にはEDI市場の縮小につながると懸念されていますが、これに対する次の一手はお考えですか?

 クラウド化への流れが加速する中で今後、オンプレミスのEDI製品の市場成長は難しいのが現実です。そこで、当社が新たなビジネスチャンスと着目しているのが社内のシステム連携です。

 EDI市場は、国内で40億円規模とされていますが、社内システム連携の市場は、その10倍の400億円規模ともいわれています。この市場はまだ開拓の余地がありますので、ここで確固たるポジションを獲得することを目指します。

企業内データ連携市場に参入

――社内システム連携の市場は、競合ベンダーが多く、ここでの市場参入は最後発にもなります。市場切り崩しに向けた秘策は。

 今まで社内システムの連携と企業間のデータ連携は、それぞれ別々の仕組みで行われていました。そこで、当社では、単に社内システム連携製品を提供するのではなく、EDI製品での実績をベースに、社内外のデータをシームレスにつなぐソリューション提案を進めていきます。

 そして、そのための戦略的製品と位置づけているのがACMS Apexです。ACMS Apexを導入することで社内の基幹システムからサービス事業者が提供するSaaSなどまで、社内と企業間を含めた統合的なデータ連携基盤を容易に実現することができます。

 当社製品の強みとして、フォーマット変換と通信手順をワンストップで提供している点が挙げられます。これはサーバ系では、国内で当社だけです。

 さらに、EDI市場でシェアナンバーワンの導入実績も、社内システム連携市場の開拓に大きなアドバンテージになります。サーバ系のEDI製品は、ほとんどが当社製品が使われていますので、そこにシームレスに接続できるACMS Apexは、最後発でありながらも社内システム連携市場でシェアを獲得できるチャンスはあると考えています。

 いずれにしても、当社にとって変わらないのは、常に顧客のニーズに応え、使いやすい製品を提供し続けていくということです。実は、今ではトップシェアのEDI製品も当社が市場参入したのは最後発でした。

 そこから、(1998年からPCなどの部品のサプライチェーンの標準規格)RosettaNetや(JEITA/ECセンターが標準化するECでの標準規格)ECALGAなど、あらゆる業界標準を着実にカバーし、顧客に求められるEDIツールを追求し続けてきたことが、現在のポジションにつながったのだと思っています。

――EDI市場でのビジネスを維持しながら、少しずつ守備範囲を広げていくということですね。その中核を担うACMS Apexの今後の製品戦略を教えてもらえますか。

 まずは、EDIサービス事業者を中心にACMS Apexの導入を進め、次のステップで、EDIサービス利用企業に向けて社内システム連携基盤としての導入を広げていきます。そして、その先のステップとして、社外のパブリッククラウドまで、すべてのデータをつなぐエンタープライズデータ連携基盤を目指します。これに向けて、今後、データハンドリングプラットフォーム「RACCOON」とACMS Apexを製品統合することも計画しています。

 将来的な展望としては、ACMS Apexがエンタープライズデータ連携基盤として幅広い企業に普及拡大した際には、当社の持つデータ連携技術とフォーマット変換技術をさらに高めるとともに自社開発あるいはパートナー企業と協業してデータの価値を判断する技術を取り入れ、データ統合ソリューションへと進化させていきたいと考えています。

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