KPMGコンサルティングは、人工知能(AI)の自然言語処理などを活用した人事業務の効率化・高度化に係るアドバイザリーサービスの提供を開始した。このサービスに先駆けて2017年1月から検証に着手しており、大幅な効率化が見込める可能性があることを確認しているという。
同社は、「デジタルディスラプション(デジタル時代の創造的破壊)」が近年、業界・業種に関わらず急速に現実のものとなっていると言及。特に人事業務や財務会計業務などの内部事務業務に関しては、作業効率の向上、品質の向上を競争力の向上に結び付けるための不断の取り組みが実施されているものの、大きな効果の創出に至っていないケースが散見される。また、こうした状況の背景には、現場における働き方の改革が進んでいるものの、根本的に人材の可能性、能力を最大限に引き出すことに資するような取り組みがなされていないことが要因として考えられるとしている。
具体的には、人材を一定のルールに基づいて分類し、あらかじめ設定した軸にそって評価を行う手法は活用されているものの、個人が持つ本来の多くの特徴から業務遂行に必要な資質を最大限引き出して競争力を向上させるような取り組みに至っていないことが多いという。
これに対し同社では、社員一人ひとりの特徴に着目し、仕事の特徴と突合することで最適な配属のマッチングを行い、企業による生産性向上ならびに働く喜びの追求が実現できるものとしている。今回は、こうした人と組織の特徴に着目をしたマッチングを実現するために、その組織らしさをデータとして蓄積することで人事業務の採用、配属、評価、昇進・昇格、異動にかかる業務全般の支援を推進していくサービスを開発した。
配属業務高度化の概念図
これまでは、限られた要員配属担当者が手作業で膨大な履歴書や自己PR、業務実績、技術報告書などの文章から技術員の特徴を分析して、配属先を検討していたため、多大な工数を要した。企業によっては部署で必要とされる専門性も複雑化しており、個々の専門性を正しく把握した適切な配置は非常に難易度の高い作業となっているという。
今回、証実験環境を提供したトヨタ自動車 パワートレーンカンパニーでもこのような課題を抱えていたといい、KPMGコンサルティングは、自然言語処理技術を実装したAIを活用して実証実験を行った。その結果、従来比で次年度以降では4割程度、将来的には8割超の業務効率化が可能であると試算している。また、人間が分析することのできなかった情報まで全量分析することが可能となり、精度の高い推奨の実現に寄与するという。
AIは、過去のデータや配属担当者の経験と照らし合わせて、最もマッチングの可能性が高い部署をレコメンドする。最終的な配属先は、配属担当者が1件1件を検証し決定することになるが、配置業務の効率化や高度化に大きく寄与することを期待されている。
AIを活用した業務高度化の概念図