Amon氏が述べたように、5Gでは約1ミリ秒の遅延を目指すとされており、現在の4Gからの大きな進歩となる。この種の改善は、クラウドコンピューティングをより有益なものにし、多くの新たなコンピューティングの可能性を切り拓く。
クラウドの信頼性が上がれば、ユーザーはクラウドをストレージに使うようになる。このためデバイスに求められる内蔵ストレージは小さくて済むようになり、コストの削減につながるとAmon氏は言う。また同氏は、応答時間がオンプレミスとほぼ同じになるため、ミッションクリティカルなアプリケーションを含む、より多くのITインフラがクラウドに移されるだろうとも述べている。
人工知能(AI)と自動運転車に力を入れているBaiduのLu氏は、低遅延は自動運転車の性能改善、安全性の向上、マッピング強化のための鍵だと述べている。5Gの低遅延はまた、Lu氏が「新たなモバイル」と呼ぶエッジコンピューティングの成長にも寄与する可能性がある。
3.5Gには新たなインフラと技術が必要になる
Vestberg氏がパネルディスカッションで説明したように、2G、3G、4Gは主に消費者の利便性向上を目指したものだった。しかし5Gでは、機能セットに企業のニーズが考慮されている。ただし、それらの機能を実現し、5Gをフル活用できるようにするには、新たな技術を実現する必要がある。
まず通信事業者は、サービスを届ける方法を考える必要がある。Amon氏は、通信業界はミリ波技術やサブ6GHz周波数帯の利用に向かうと考えている。実際、初期の5Gの実験では、多くの場合ミリ波帯が使われている。Vestberg氏が述べたとおり、ミリ波帯を使った通信は通信距離が短いが、スループットを大きくできる。
もちろん、どのようにそれを顧客に届けるかという問題もある。データを運ぶには光ファイバが必要であるほか、デバイスがそれを利用できるようにするには、新しいアンテナ、チップ、アプリケーションが必要になると見られる。
企業が考慮すべきポイントは
スマートフォンはかなり前からビジネスのあらゆる面で必要不可欠な要素になっている。ビジネスリーダーは、5Gによって実現する新たな機能と、それをどう利用できるかについて考える必要があるとAmon氏は言う。
また同氏は、5Gが導入されれば利用できるデータの量が大幅に増えるため、企業はデータの収集と処理に機械学習やクラウドソリューションを利用することを検討する必要があるとも述べた。Lu氏もAI技術について触れ、5GはAIが活用できる場面を増やすだろうと述べている。同氏は企業のリーダーに対して、5Gの到来に向けてデジタル変革戦略を修正すべきだと呼びかけた。
Vestberg氏は遅延に関して、5Gによって顧客サービスや打ち合わせにリアルタイムコミュニケーションが利用できるようになり、企業と顧客や従業員の距離が縮まると語った。これは、企業の中と外におけるコミュニケーションを根本的に変える可能性があり、リーダーは変化に備える必要がある。

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この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。