電子住民の申し込みはオンラインでできるが、IDカードの受け取りは大使館でしかできない。エストニア国外でカードを受け取れる場所が限られていることも、プログラム拡大の大きな障害の1つだ。
この問題を改善するため、2017年12月から、韓国の公認ビザ申請センターで電子住民用デジタルIDカードを発行する試験プログラムが実施されている。
「計画では、開始から6カ月間で、EUへの事業拡大を考えている韓国の電子住民500人にサービスを提供する予定だ」とKorjus氏は述べている。
「しかしこの試みでより重要なのは、エストニア政府の代理として対面でのやりとりを行う民間企業のパートナーと協力して、試験プログラムを成功させられるかどうかだ。これが成功すれば、ほかの場所にも素早く事業を拡大できる」
将来的には、電子住民制度への需要が高いが、既存の受領場所へ行くことが難しいような場所にプロジェクトを拡大していく可能性があるという。
「例えばバンガロールでは、電子住民コミュニティーが拡大しつつある。インドの首都に行かなくても、そこでカードを受け取ることができれば、電子住民にとって便利になるはずだ」(Korjus氏)
Korjus氏は、国外パートナーを増やすことでセキュリティ上のリスクが増えることは認めるものの、多くの国では、民間のサービスプロバイダーと提携して公文書を交付していることも指摘している。
「セキュリティは常にエストニアの最優先事項であり、わが国はパートナーが確実に同じ水準の要件を満たすように務める」と同氏は言う。
「エストニアは、世界中に暮らしているエストニア人が簡単に文書を入手できるように、今後ビザ申請センターでエストニア国民に文書を交付できるようにすることも検討している」(同氏)
同プログラムでは、今後1年間で電子住民が2万人増加し、2500社の企業が設立されると予想している。またKorjus氏はすでに新しい試みに取り組んでおり、その詳細は2018年中に発表される予定だという。
同氏はこの計画について、「電子住民を担当するチームは、エストニアを新規仮想通貨公開(ICO)に最適な国にできないかを検討する予定だ。それには当然、規制や本人確認(KYC)、税制、バンキング、トークンの売却を希望する企業のベストプラクティスなどについて明確にしていく必要がある」と述べている。
「これには一部の規制の変更や、民間部門とのさらなるパートナーシップの構築も含まれる可能性があるが、われわれにはこれらの課題に取り組む準備ができている」(同氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。