内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

変革できないIT部門のジレンマ

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2018-03-14 07:30

  大きなビジネス環境の変化や技術革新が進行する際には、必ずと言っていいほどIT部門の組織ミッションや存在価値に関する議論が沸き上がります。現在は、あらゆる業界で押し寄せているデジタライゼーションの波にどのように立ち向かうかが問われていますが、これに対応できていないIT部門の実態があらためて明らかになりました。

従来業務に忙殺されるIT部門の実態

 これまでも、リーマンショック後のコスト削減の嵐、内部統制への傾注といったビジネス環境の変化に直面した時、また、オープンシステムの浸透、ERPの台頭、クラウドの普及といったテクノロジの転換期には、IT部門のあり方を問う議論が必ず持ち上がってきました。今まさに、こうした議論が再燃しているのはデジタライゼーションの潮流によって、本業分野におけるビジネス変革やビジネスモデルの転換にIT部門がどのように貢献できるかが問われていることが背景にあります。

 ITRが17年間継続して行っている「IT投資動向調査」では国内ユーザー企業のITに対する取組みを定点観測的に追跡していますが、最新の調査では現在と今後のIT部門の役割に関する質問を投げかけています。まず、自社のIT部門が「現在担っている役割」と、「3~5年後に担うべき役割」をそれぞれ問うた結果を集計してみると、全体的に担うべき役割が縮小・分散する傾向がみられました(図1)。

図1.IT部門の役割(現在/今後)。出典:ITR「IT投資動向調査2018」
図1.IT部門の役割(現在/今後)。出典:ITR「IT投資動向調査2018」

 これは、従来の一般的な企業IT(エンタープライズIT)の維持運用に加えて、グループやグローバルへの対象領域の拡大、セキュリティやガバナンスへの対応など実施しなければならない業務は増加する傾向にあるものの、人材は必ずしも増員されるわけではなく、抱えている業務で手一杯という状況から何とか脱したいという意向を読み取ることができます。

 特に、現在のIT部門が担っている中心的な役割である「システムの機能やパフォーマンスの改善」「システムの安定稼働/障害対応」「セキュリティ管理」といった「従来型機能」に位置づけられる項目は、調査時点では6割程度の企業でIT部門が担っていますが、3~5年後にもIT部門が担うべきだと考えている企業の割合は3~4割と大きく落ち込んでいます。

 従来型のエンタープライズITの領域は、依然として企業の重要な業務を支えているため、安定性や安全性を確保しなければならないことに変わりはありません。しかし、それにかける時間や労力は、何とかして軽減しなければならないと多くのIT部門が考えています。したがって、こうした「従来型機能」は中長期的にはクラウドの活用、専用性に優れた外部の事業者へのアウトソーシング、システムによる自動化などを推進していくことが期待されます。

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