本連載の前回「イノベーション推進におけるIT部門の役割」では、イノベーションの創出・推進において従来のIT部門が支援すべき活動について考えます。今回は、こうした新しい取組みに対するIT部門の関わりについて、調査データをもとに考えてみます。
7つの新規テーマの推進主体となる組織は
ITRは、国内企業におけるIT投資動向の包括的な把握を目的としたアンケート調査を2001年より毎年実施しており、2017年8~9月に実施した今回は通算で17回目を数えます。ITRの顧客企業やウェブアンケートの独自パネル会員のうち、国内企業のIT戦略やIT投資の意思決定に関わる役職者を対象にアンケートを依頼し、2554件の有効回答を得ました。この調査では、従来から定点観測しているIT予算の増減傾向や製品・サービスの投資意欲の動向の変化に加えて、企業が昨今抱えている課題について推進役を担うべき部門について着目しています。
今回の調査では、昨今課題となっている7つのテーマを抽出し、それらについて、推進役を担うべき部門・組織を問うています。その結果、いずれのテーマでも既存のIT担当部門が推進役を担うべきだとする割合が最も多く、特に「クラウドサービスの導入・利用拡大」と「サイバー・セキュリティ被害への対応」においては、50%を上回る高い割合を占めることが明らかとなりました。
ただし、人工知能(AI)やIoTの導入、デジタル・ビジネスや働き方改革といったテーマにおいては、既存のIT部門が中心的な役割を担うべきとした割合が半数を下回っており、相対的にIT部門の関与度が低くなることが予想されています。特に、デジタル・ビジネスや働き方改革は、新規で立ち上げる専任組織の割合が相対的に高い傾向にあります。
図1.課題テーマについて中心的な役割を担うべき部門 出典:ITR「IT投資動向調査2018」(有効回答:2554件)