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企業セキュリティの歩き方

セキュリティ人材の末路--“魔王を倒した勇者のその後”と重なる存在意義

武田一城 (ラック)

2018-03-26 06:00

 本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティを向上させていくための視点やヒントを提示する。

セキュリティ対策が必要な理由

 「セキュリティ対策がなぜ必要か」。この問いにいま一度立ち返ってみると、その理由は世界のどこかにいる人間がサイバー攻撃をしているからだ。このような脅威がなければ、そもそもセキュリティ対策は必要ない。しかし人間が存在し続ける限り、そのような理想はまず実現しないだろう。

 サイバー攻撃とは、そもそも人間の欲望が引き起こす犯罪行為だからだ。世界から犯罪行為そのものがなくなるのが理想だが、残念ながら“人間の本質は欲望そのもの”と言っても過言ではなく、サイバー攻撃や内部不正といった脅威が無くなることは将来も含めて難しいだろう。

 それらの脅威を低減するためのセキュリティ対策は、今後も必要であり続けるどころか、より強く求められるようになり、将来の脅威はいま以上に増え続けるはずだ。その理由はいくつもあるが、技術の進化や経済のグローバリゼーションがもたらす世界レベルの所得格差の拡大などの非常に根が深い問題も含まれる。その結果、持たざるものが持つものをねたみ、人間のねたみの心がサイバー攻撃などの脅威として実行され続けることになる。

セキュリティ人材が目指す将来

 このように、セキュリティ対策が必要になる背景を鑑みると、結局は“人間の業”のようなものにたどり着く。サイバー攻撃のような脅威をゼロにすることはまさに神だけができる所業かもしれないが、セキュリティ人材による強固な防御策によって、サイバー攻撃などの犯罪が“労多くして利益少なし”というものになれば、サイバー攻撃という手段では犯罪者の欲望を満たされなくなる。おのずと、サイバー攻撃の発生が限りなくゼロに近づくはずだ。

 しかしながら、仮にこのような世界が実現された将来、それはセキュリティ人材にとって望ましいことなのだろうか。この理想の実現は非常に大きなセキュリティ人材への環境変化をもたらす。つまりサイバー攻撃がなくなった世界とは、セキュリティ人材が不要な世界になったことを意味するからだ。

 このようにセキュリティ対策とサイバー攻撃の関係は、光と影の関係と言ってよいだろう。また、この論点から「コンピュータウイルスはセキュリティ会社が作っているのではないか」という陰謀論が20年以上前からまことしやかにささやかれ続けている。もちろん、ほとんどのセキュリティ人材は、そのようなダークサイドに陥ることなく、この瞬間も攻撃者の意図をできるだけ早くつかみ、その対策によって脅威を打ち消すことに勤しんでいるのだ。

 ここでセキュリティ対策側が攻撃側に勝利した未来を想像してみたい。セキュリティ対策において、その防御システムをメンテナンスするようなニーズを除いて、少なくともホワイトハッカーやトップガンと言われるような高度なセキュリティ人材の必要性が大きく低下し、失業はしないまでも他の分野への業務転換を余儀なくされる人も少なくないだろう。

 セキュリティ人材の究極の目標は、自分の仕事を自分で奪ってしまうことなのだ。しかし、それでもセキュリティ人材が目指す将来とは、本質的にはこのような崇高さが必要だろう。仮にセキュリティ人材がその仕事を無くさないために手を抜くような行為をするならば、セキュリティ業界自体が攻撃者に加担していると前出の陰謀論のように社会に捉えられてしまうからだ。ここまでの話はあくまで空想の産物であり、現実になることは考えにくいが、もし理想通りの世界が全て実現した場合には、このようなセキュリティ人材の末路へたどり着く可能性をはらんでいることを理解しておくべきだろう。

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