本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、AWSジャパンの岡嵜禎 技術統括本部長と、NECの中田平将 理事の発言を紹介する。
「Amazon EC2のSLAを99.95%から99.99%に引き上げた」
(AWSジャパン 岡嵜禎 技術統括本部長)
AWSジャパンの岡嵜禎 技術統括本部長
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)が先頃、AWSのクラウドインフラを中心としたサービスの強化について記者説明会を開いた。同社で技術統括責任者を務める岡嵜氏の冒頭の発言はその会見で、主要サービスである「Amazon EC2」において、顧客とのSLA(サービスレベル契約)として提示する可用性の稼働率を99.95%から99.99%に引き上げたことを明言したものである。
今回の会見では、AWSがここ数カ月で実施したサービスの強化について説明。具体的には、2月13日から利用可能になった「大阪ローカルリージョン」や、東京リージョンで新たに追加された4番目のアベイラビリティゾーン(AZ)、EC2基盤、およびネットワーク機能の強化などである。
とりわけ、会見では大阪ローカルリージョンの位置付けや機能をめぐる質疑応答が活発に行われた。その内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の岡嵜氏の発言をめぐる話に注目したい。
岡嵜氏によると、AWSのクラウドインフラは、グローバルで18カ所のリージョンと1つのローカルリージョンを展開している。その唯一のローカルリージョンが、2月に開設された大阪の新拠点である。リージョンは複数のAZで構成されており、全世界で合計54のAZが設けられている。そのAZは複数のデータセンターによって構成され、高い耐障害性を提供できる設計となっている。(図参照)
図:リージョンとアベイラビリティゾーン(AZ)の概要
そうした中で、AWSはこのたびEC2におけるハードウェア障害の影響を最小化する機能を全てのリージョンで装備。これにより、顧客とのSLAとして提示する可用性の稼働率を99.95%から99.99%に引き上げた。SLA水準の引き上げは4年ぶりだという。すなわち、AWSのクラウドインフラの稼働率が上がったわけで、現在のAWSの普及状況を考えると、全体の可用性の底上げにつながる大きな影響がありそうだ。
岡嵜氏によると、AWSのサービスはここにきて、金融機関を含めて企業の基幹業務システムを移行するケースがますます増加しているという。今回、大阪ローカルリージョンを設けたり、SLAの稼働率を引き上げたのも、そうした動きが背景にあるからだ。
「AWSのサービスは常にユーザーのデマンドに基づいて強化している」。AWSの理念でもあるこの言葉は、今回の会見でもたびたび聞かれたが、それが今のAWSの勢いに結びついている印象を強く受けた。この勢いが今後も続くか、注目しておきたい。