ITインフラの運用自律化(1)--自動化との違いと今求められる理由 - (page 2)

内村友亮 (日本オラクル) 2018年04月20日 10時00分

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「自律化」と「自動化」の違い

 ITインフラはこれまで、決められたやり方をその通り確実にこなしてくれる自動化への取り組みが進められてきました。最近のITインフラは、ビジネスモーメント(ビジネス契機の瞬間)を迅速に捉えることが求められる状況下で、ハイブリッドクラウド化やマルチクラウド化など複雑な組み合わせとなる傾向にあります。ITインフラ自らが学習し、独自にルールを作って仮説検証し、状況を把握して最適な方法を選択・判断して自ら実行する自律化が新しい潮流となっています。

図2:ITインフラにおける自律化と自動化の違い
図2:ITインフラにおける自律化と自動化の違い

 インフラ自律化の本質的なゴールは、ITインフラの自己管理によって、利用者、開発者、運用者が、低レベルのタスクから解放されて、本来の業務にもっと集中できるようになることだと筆者は考えます。オラクルにおいては、旧来のリリースから継ぎ足しを繰り返しながら自動化機能を強化してきました。例えばデータベースでは、SQLの問い合わせを最適化する「問合せオプティマイザ」機能や、データの格納を最適化する自動ストレージ管理機能などです。

 オラクルの自律型サービスは、予測的な洞察を導き出す新たな機能によって、これまでの自動化機能を制御(オーケストレーションと呼びます)することで、ITインフラの自律化を実現しています。

なぜITインフラの自律化が必要なのか?

 ITインフラの自律化が必要な理由は、企業がエンタープライズITにおけるマクロ視点での課題解決策として、クラウドプラットフォームを選択肢と考えることが増えているためと筆者は考えます。このエンタープライズITにおけるマクロ課題を、3つの点に絞って解説します。

図3:ITインフラの自律化が必要な理由
図3:ITインフラの自律化が必要な理由

 1つ目は、エンタープライズITがビジネスモーメントへの俊敏性や伸縮性を求められる点です。イメージをつかんでもらうために顧客管理システム(CRM)を例に取ります。従来の顧客離脱予防は、離脱の可能性が高い顧客を予測し、マーケティングキャンペーン(例:コンシェルジェサービスや提携企業のディスカウントチケット、優待など)によってその顧客ニーズを満たすという方法が取られていました。

 2010年代のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の発達によって、利用者のアクセスしようとしているサービスに対して、氏名やメールアドレス、投稿した写真などを参照できるようになりました。さらに、ここ数年では、ディープラーニング(深層学習)を用いて、顧客のニーズをより細かくくみ取ってサービスの差別化を図るといったケースもあります。このような新しいビジネスモーメントが生じた場合に、エンタープライズITは俊敏性や伸縮性を求められます。

 2つ目は、企業のITインフラが複雑さを増している点です。ITインフラは仮想化によってある程度の整理を終えている状況とはいえ、オンプレミスとクラウドのハイブリッド化や、複数のクラウドサービスを活用したマルチクラウド化は、これから解決を求められる課題となります。

 また、クラウドがITインフラの選択肢に挙がるようになると、クラウド移行に関する新たな課題も出てきます。例えば、クラウド環境への移行でコスト削減を狙ったが、複雑に絡み合ったアプリケーションは納豆のように糸を引いて、移行作業を困難にさせます。クラウドで障害が発生した際、オンプレミス環境向けに設計されたアプリケーションでは、思わぬところに影響が拡大することも考えられます。

 さらに、クラウド利用がIT部門ではなく業務部門に広がると、ミドルウェアそのものの変更が目に付くようになるでしょう。IT部門が担っていた保守業務(例えば、セキュリティパッチや、データベースのバージョンアップなど)について、業務部門からすると「何でそんなことの変更でシステムを止めなければならないの?」という、今まであまり目立たなかったところが目に付くようになります。

 ともすると、クラウドシフトによってITインフラの複雑性が人間の管理能力を越えてしまう危うさを含んでしまうことになります。

 3つ目は、企業におけるIT人材の流動化です。先鋭的な開発者は、OSSなどを活用した新しいソフトウェア開発に取り組み、ビジネスに新しい価値を生み出そうとしています。さまざまなOSSコミュニティーが形成されており、目的に合わせて必要なツールを選びやすい状況になっています。

 運用管理者も同様に、安全で効率的なシステム運用を実現するために、OSSを上手に活用しようと模索しています。既に多くの運用管理ツールがOSS市場に流通しており、こちらもツールの選択肢に事欠かない状態となっています。

 開発や運用のOSSが多く使われているような状況において、インフラの自律化なしには、低レベルのタスクから解放されて、本来業務に集中するといった効果をもたらすことは難しいでしょう。

第2回はこちら

内村友亮(うちむら・ともあき)
日本オラクル クラウド・テクノロジーコンサルティング事業本部 テクニカルマネージャー
クラウドプラットフォームのコンサルティングサービスを担当するチームで、クラウドシフト支援やデータ高度活用支援などのサービスを展開する傍ら、『即戦力のOracle管理術』(ISBN 978-47-7415-134-2)、『Oracleの現場を効率化する100の技』(ISBN 978-47-7417-332-0)、ブログなどで技術情報を発信している。

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