Cisco Merakを率いるシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのTodd Nightingale氏
Cisco Systemsは、ネットワーク領域でソフトウェア定義(SDx)技術を用いた高度な運用管理を実現する「Cisco Digital Network Architecture(DNA)」を展開し、そこでは「Intent-based Networking(ビジネスの意図に基づくネットワーク)」や「Network Intuitive(直感的なネットワーク)」というコンセプトを打ち出す。
この取り組みの一角を担うCisco Meraki部門 シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのTodd Nightingale氏は、「ユーザーが本業に専念できるよう、パワフルなテクノロジをシンプルに使えるようにすることが根底にある」と話す。2012年にCiscoが買収したMerakiは、クラウドベースの無線LAN管理を可能にした草分け的な存在として知られる。
以前からMerakiで技術戦略などを統括したNightingale氏は、買収によって(1)グローバル市場への進出、(2)継続的なポートフォリオの拡大、(3)テクノロジの新展開――の3つのメリットが生じたと説明する。(1)では、2016年に日本の事業展開を本格化させ、中小企業向けブランド「Cisco Start」を通じた販売やNTT東日本の「ギガらくWi-Fi」の採用などによって、クラウドベースのネットワーク管理モデルの浸透を図った。
(2)では、このモデルを無線LANからルータやスイッチなどに広げ、サーバなどコンピューティング側にも応用しようとしている。この延長線上として(3)では、上述のコンセプトに基づくネットワークの新たな管理や利用の具現化があるという。
Nightingale氏は、もともとMerakiのソリューションが、コマンドラインインターフェース(CLI)による煩雑なネットワークの管理を簡素化、効率化する目的で、クラウドのGUIベースを採用している点を強調する。これによって膨大な数の無線LANアクセスポイントの導入設定や管理を一括して行えるため、管理対象とするデバイスの種類や数が増えても柔軟に対応でき、IoTデバイスにも適用しやすい。
「現時点でクラウドベースのメリットは管理の効率化だが、今後は膨大な数のIoT機器を迅速に導入設定するといった俊敏性も提供できる。5年後のネットワーク管理は、これまで常識だったCLIなどの管理手法が信じられないものになっているだろう」(Nightingale氏)
Intent-based Networkingの一例としては、アプリケーション単位による“ユーザー体験”の把握が挙げられる。具体的には、ネットワーク機器やトラフィックの状況などを分析することで、動画配信やSNSといった各種サービスの接続性やパフォーマンスといった状態が数値情報としてダッシュボート上に提供される。管理者はアプリケーションごとのサービスの状態を瞬時に把握でき、障害などの際にも問題箇所の特定や切り分けが容易に行えるようになっている。
Intent-based Networkingの一例として、アプリケーション単位での性能監視情報がダッシュボート上のGUIで提供されている
Nightingale氏によれば、ここまで取り組みはネットワークの“管理”の効率化や高度化を図るものだが、Cisco Merakiが見据えるのは、インテリジェントなネットワークの“利用”だと話す。
同社が先頃リリースしたクラウドベースの監視カメラソリューションでは、カメラ本体の設置や管理を容易にするとともに、「ピープルカウント」や「モーションサーチ」と呼ぶ分析や検索などの機能を搭載する。「カメラ本体に人の動きを検知し、人物と物体を識別する“インテリジェント”な機能を組み込んでいる。例えば店舗なら、管理者がダッシュボート上の映像で来店客の状況を把握するだけでなく、導線を分析して商品などの配置を検討するといったこともできるだろう」(Nightingale氏)
従来のネットワーク型カメラの主な用途は、複数の離れた場所の集中監視だったが、当然ながらユーザーの目的によってその用途は広がる。Ciscoが掲げるコンセプトの狙いは、こうした新たなネットワークの利用モデルにあるといい、Nightingale氏は今後、監視カメラソリューションとCRM(顧客関係管理)アプリケーションを連携させるAPIの提供なども検討していくと話す。
監視カメラソリューションでは、検索から人の動きがある映像だけをすぐに抽出、再生できるようにした