同社は提供するサービスを手に「今後は臨床研究や製造販売後調査など、すべての業務をサポートするシングルプラットフォームを構築し、科学的根拠に基づく試験デザイン、患者の近くに寄り添う患者中心社会の実現を目指す」(山本氏)
同社はまた、患者中心の臨床試験にmHealthプラットフォームが不可欠な時代だと語る。
メディデータ・ソリューションズ ソリューションセールスディレクター 稲留由美氏
ソリューションセールスディレクター 稲留由美氏は「(患者の生活を考慮する)ペイシェントジャーニーが身近な時代を迎えた。病気発覚後は診断や治療を受け、病気とともに生きていく。そこにmHealthが加わることで、患者中心の臨床試験環境が整う」という。
例えば臨床試験にウェアラブルデバイスを利用すれば、来院時に計測したデータではなく日々のデータを評価できるため、「リッチデータの取得で、わずかな差異を変化として判断可能」(稲留氏)となる。つまり、従来は取得できなかったデータで製薬の有効性と安全性を評価することが可能だ。
他方で被験者や患者の意思を尊重することが、個別化医療で臨床試験が変化する現場を救うという。既に対象患者の希少化や治験実施計画書の複雑化、データの大量化といった問題が表面化している。
だからこそ、「患者が臨床試験を受ける際の思いが鍵。被験者や患者は(臨床試験や治療)内容を理解して参加したい、試験のための来院や介入は手間に感じるなど、複雑な思いを抱いている」(稲留氏)。臨床試験を通じて患者が疾患とともに生きていくことを開発関係者が真剣に理解すべきだと稲留氏は強調した。評価尺度の見直しや来院間の日常生活の可視化などがmHealthで実現するという。
mHealth活用による被験者や患者から得られる情報の可能性(出典:メディデータ)
既に多くのmHealthデバイスは具現化している。米VitalConnectの「HealthPatch MD」は心電図や心拍数などを測定し、Bluetooth経由で取得したデータを解析できる。米Empaticaの「Embrace」はてんかん発作を検知するウェアラブルデバイスとして、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた。
大塚製薬は世界初の“デジタルメディスン”「Abilify MyCite」が2017年11月にFDA承認取得を発表。摂取可能な極小センサで服薬状況を測定し、適切な服薬指導が可能になる。オムロンヘルスケアもウェアラブル血圧計「HeartGuide」をFDAに申請し、2018年中の発売を目指している。これらすべてがメディデータのプラットフォームと連携している訳ではないが、同社は「いつでも準備はできている」(山本氏)という。
メディデータはモバイルアプリを用いた臨床試験サービス「Medidata Patient Cloud」も提供している。例えば、臨床試験に参加する被験者の同意を電子的に取得して管理する「Rave Enroll」は、2017年4月にMytrusを買収して獲得したサービスだが、動画による試験内容の説明で被験者や患者の理解度アップが可能だ。
「製薬企業も治験から脱退することは極力避けたい。(Rave Enrollはその点を)サポートする」(稲留氏)。また、「Rave ePRO/eCOA」は被験者日誌(Patient-Reported Outcome:RPO)のような患者報告アウトカムシステム(ePRO)や臨床アウトカム評価(eCOA)を被験者や患者が使い慣れたデバイスで実現する。
メディデータは「技術は技術として発展するが、それを利用する人間の行動を念頭に置き、利用場面に応じて技術を提供するのが使命だと考えている。デジタルヘルスと人間行動の融合が重要」(稲留氏)と述べつつ、mHealthデータプラットフォームで患者中心の臨床試験を強力に推進していく考えを示した。
Medidata Patient Cloudのソリューション群(出典:メディデータ)