特にセキュリティについては、リスクの85%が、1年前に提供されていたパッチを当てれば回避できたというデータを例に出しながら、「自動でパッチを当てることが重要である」と指摘する。
「既に出ているパッチを当てないケースが多いのは、パッチを当てるためにアーキテクチャを書き直したり、アプリケーションをオフラインにするなど、多くの手間が掛かっていたことが要因。これがOracle Autonomous Data Warehouse Cloudでは自動的にパッチを当てることができるようになる。アプリケーションもオフラインにする必要がない。まさにキラーアプリになる。また、Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudでは、バックアップ時も、リストア時も、データを暗号化しており、高いセキュリティを実現している。エッジにおいては、マルウェア対策もできるようになっている。パッチ、暗号化、エッジの管理という3つの観点からセキュリティを高めている」と説明した。
米オラクル データウェアハウス&ビッグデータテクノロジー担当シアバイスプレジデントのCetin Qzbutun氏
コスト削減については、Amazon Web Services(AWS)と比較して見せた。「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudは、AWSに比べて、同じ費用で、14倍以上の性能が出て、しかもまったく手間がかからないため、管理者のコストが下がる。また、拡張性を持つ一方で、使用した分だけ支払えばいいという仕組みになっており、これもコスト削減につながる。データベースの領域で、これだけの弾力性を提供しているのはOracleだけである」とした。
また、米Oracleデータウェアハウス&ビッグデータテクノロジー担当シアバイスプレジデントのCetin Qzbutun氏は「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudでは、データウェアハウスのための理想的なクラウドサービスを構築している」と前置きし、「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudでは3つのベネフィットを提供できる。1つは、シンプルであり、プロビジョニングの際にも5つの項目だけを入力すればいいという点。専門性が必要なく、誰でも利用できる。そして、稼働すれば自動管理され、セキュリティも保証されている。2つ目は、最も高速に稼働するように設計されている点。これは長年の経験をもとに実現したものである。3つ目が、柔軟性と伸縮性を持つ点。CPUの数やストレージの数を自由に選定でき、スケールアップやスケールダウン、データベースの停止も瞬時に行える」とした。
これらの特徴をAWSと比較してみせる。
「RedShiftでは、プロビジョニングの際には固定したビルディングブロックから選択しなくてはならないため選択肢が限られること、実際にユーザーが利用しているワークロードで比較すると、パフォーマンスでは、RedShiftに比べて18倍も高速であり、しかもRedShiftではチューニングをし続けなくてはならないのに対して、Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudでは、まったくチューニングをせずに自動化によってパフォーマンスを維持できる。さらに、RedShiftでスケールアップするには、新たなクラスタを作らなくてはならず、データのすべてを既存のクラスタから、新たなクラスタに移行しなくてはいけない。それらのデータをコピーしなくてはならないという手間が発生する」などと指摘した。
自律化という新たな機能が、多くのメリットを生んでいることを示してみせた。
既に導入が開始されているOracle Autonomous Data Warehouse Cloudは、導入している企業の規模がさまざまだったり、採用されている地域も、欧米やアジアなど多岐に渡ったりしているという。そして、日本でも採用されている例があるとする。
米Oracleブロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのPenny Avril氏は、「Oracleがこれまで関係を持っていなかった顧客からの問い合わせが多い」という傾向が出ていると指摘する。
今回のOracle Global Media Dayでは、いくつかの事例を紹介したり、実際に導入しているユーザーを招いたりして、そのメリットを強調してみせた。
例えば、レンタカーのHertzでは、Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudの導入によって、管理コストが低くなったことや、顧客に対するサービス向上でのベネフィットがあったとし、ミネソタ州立大学ではオンプレミスからの移行により、パフォーマンスを向上させる一方、生徒に関する情報を分析することで、退学防止など、生徒に対して効果の高い指導に利用できているという。スポーツチームの解析データを取り扱っているQLXでは、集中するアクセスに対応。サービスの拡張にも活用できた。
ラスベガス市でも、Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudを導入している。ラスベガス市のIT担当ディレクターのMichael Sherwood氏は、「これまでは、ハードウェアのメンテナンスだけで数億円の費用がかかっていたが、これが削減できるようになった。そして、費用よりも、時間を創出できたことが重要である。職員がデータをより活用する環境を提供できるとともに、顧客サービスに時間を割くことができるようになり、職員の仕事の仕方がプロアクティブになった。ラスベガスの街が、他の街に比べて競争力を上げることができた」と述べた。
アクセンチュアのPat Sullivanマーケティングディレクター
一方で、自律化によって、DBAが不要になるという指摘も出ている。
全世界で2万人にのぼるOracle Databaseの専門家を抱えるアクセンチュアのPat Sullivanマーケティングディレクターは、「データベースの専門家のこれからのキャリアを考えていく必要がある」とし、「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudによって、データそのものにどんな価値があるのかということにフォーカスした仕事をしなくてはならない。つまり、データの管理が自動化されれば、データの専門家として、本来持つノウハウを活用しなくてはならない状況に置かれることになる」と指摘。
DBAの資格取得者は、従来のようなデータの管理業務だけでなく、データの専門家として付加価値の高い仕事へとシフトしていく必要性があることを訴えた。