住友林業とNTTドコモは6月20日、LPWA(Low Power Wide Area)と衛星回線を活用した林業従事者の安否確認、事故検知に関する実証実験の結果を発表した。
LPWAは省電力での長距離通信を実現する通信方式。子機は長時間のバッテリ駆動が可能で、基地局から数km離れた場所でも通信が可能。
この実証では、省電力のLPWA送信子機を作業者が保有し、そこで得た情報を親機のLPWA受信機が代表して衛星回線へと接続する方式を取ることで、携帯電話ネットワーク圏外エリアでも衛星電話を作業者が持つことなく緊急通信が可能かどうかを検証した。これまではLoRaWANをはじめとしたLPWAの親機となる受信機は、3G/4Gの携帯回線と接続することを前提としていることが多く、携帯電話ネットワーク圏外エリアではLPWAの利用ができなかった。
実験の様子(出典:住友林業とNTTドコモ)
4月19日に実施されたこの実証では、LPWAと衛星回線を活用することで、携帯電話ネットワーク圏外エリアでの緊急通信が可能となることが確認された。
LPWAの方式としてLoRaWANと、ソニーが開発したLPWAの2種類を用いて検証した。GPS受信可能なそれぞれの方式のLPWA子機を山林内で移動させ、それらの位置情報をLPWA親機(受信機)が受信して、衛星回線経由でクラウドへとアップロードする構成を取った。子機の移動範囲は、林業従事者が実際に作業する場所を含む林道や山中、尾根、谷部分で計測した。
その結果、いずれの通信方式でも、山林で4km以上離れた地点で通信が可能であり、木などの障害物への耐性が強いことを確認できた。また、LPWA受信機を衛星回線経由でインターネット接続し、携帯電話ネットワーク圏外エリアにおいても、リアルタイムにLPWA子機の位置情報を遠隔で確認することができた。
今後、住友林業の社有林を使ってさまざまな地形条件のもと実証実験を進め、システムとしての信頼性を高める。社有林内外の林業現場での実用化を目指す。その後、両社は林業分野に限らず土木工事現場や一般の登山客の利用も視野に入れ、山間部での携帯電話ネットワーク圏外エリアに向けた新しいサービスの提供を検討していく。