シューティングゲーム「Fortnite」は、毎分9200万件のイベントを処理しており、そのデータ量は毎月2ペタバイト増加している。開発元のEpic Gamesは、Fortniteの新シーズンが始まるたびに、ゲームのクライアント、サーバ、サービスから大量のデータを取り込んでいる。
世界で最も人気が高いゲームともなれば、それに匹敵する分析アーキテクチャが必要だ。
Epic Gamesのプラットフォーム担当ディレクターであるChris Dyl氏は、同社の分析アーキテクチャや、Amazon Web Services上でのシステム構築について概説した。
Dyl氏はニューヨークで開催された「AWS Summit」で、EpicがAWSへと全面的に移行した方法や、開発者向けに多数のアルゴリズムを内蔵する機械学習ツールの「Amazon SageMaker」などで、どのように利用法を拡張したかについて説明した。さらにDyl氏は、同社がFortniteで分析をどのように捉えているかについても取り上げた。
Dyl氏によるFortniteのスライドを見れば、概要をつかむことができる。
Epicは、Fortniteユーザーが1億2500万人を超え、同時に何百万人ものユーザーがプレーし、テレメトリデータを分析とKPIのトラッキング、そして製品改善に使用しているという点で、興味深い事例である。さらにEpicの「Unreal Engine」エンジンは、ゲーム開発やコンテンツからエンタープライズアプリケーションまで、実に広範な用途で利用されている。
「当社はギリギリ限界まで能力を引き延ばしている」と、Dyl氏は語る。同氏によれば、Fortniteはこの数カ月間に100倍成長した。実際Epicは、Fortniteの急成長に伴い、サービス停止を余儀なくされたことがあり、同社はそうしたインシデントの事後分析を行って、アーキテクチャのさらなる改善に努めている。
Fortniteは最近、巨大なロケット船を発射するというイベントをゲーム内で実施した。Epicは1億2500万人ものユーザーに同時参加を呼びかけた。Akamaiによると、Fortniteは米国時間7月12日に、同社プラットフォームで1秒当たり37テラバイトという、ゲームトラフィック史上最高となる記録を打ち立てた。
Epicの分析アーキテクチャは、複数の動的パーツとマイクロサービスから構成されているが、Dyl氏によれば、おおよそ全てのものは「Amazon Simple Storage Service(S3)」に保存されている。S3、「Spark」、スコア、テレメトリデータ、「Tableau」「SQL」など、あらゆるものを統合した「リアルタイムのパイプライン」だという。
「われわれは、ARPU(ユーザー1人当たりの平均売上)からゲームの分析と改善まで、あらゆる業務でデータを活用している」とDyl氏は説明した。
Epicのアーキテクチャから、いくつかの重要な特徴が明らかになった。
- Epicは、S3をデータレイクとして利用している。Dyl氏が講演中に、データレイクという名で言及した。またAWSの最高技術責任者(CTO)であるWerner Vogels氏も同様のことを述べた。Vogels氏はインタビューで、「S3は当初、インターネットのストレージとして利用されていたが、組織がビッグデータ分析を行うようになったことで、急成長を遂げている。もはや扱うデータセットは、ペタバイト級だ」と語っている。
- アーキテクチャがこの上なく重要だ。Epicをはじめとするゲーム会社は、そのほかの企業のよいお手本になる。なぜか。それはゲーム会社の場合、製品リリースの初日に顧客が100万人押しかける可能性がある。そして多くの場合、成長は有機的でなく、爆発的な1回の成長かもしれない。Vogels氏によると、AWSのアーキテクチャチームは、Epicのような顧客と早い段階から協業する。「ソリューションアーキテクトを巻き込み、最初からベストプラクティスを採用して全てをテストする。そして、顧客の懸念事項についても探る」とVogels氏は述べた。また、より高度な機能の基盤となり得るアーキテクチャでなければならない。「Epicのようなゲーム会社が、最初から分析まで念頭に置いているとは限らない」(Vogels氏)
- 「MapReduce」とビッグデータ向けのオープンソースツールが不可欠である。EpicのアーキテクチャではSparkが中核となっている。
- マイクロサービスを活用している。Dyl氏は講演で、Epicはマイクロサービスの全体的な管理の向上に取り組んでいると述べた。ただし、Fortniteはリーダーボードや統計であれ、ユーザー体験とゲームを改善するための分析であれ、小さな機能の組み合わせから成っている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。