職場の世代ギャップをテクノロジで乗り越えられるか--マイクロソフトの見解

阿久津良和

2018-11-07 06:00

 日本マイクロソフトは11月6日、「Microsoft 365」を活用した新しい業務環境(モダンワークプレース)に関する取り組みについて説明を行った。米Microsoftで同サービスを担当するゼネラルマネージャーのCatherine Boeger氏は、「現在あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーションが起きている。われわれの関心はワークプレース(業務環境)の変化。いま多くの世代が同じ職場で働こうとしているおり、熟練者と新人がともにアイディアを出し合える社会を目指す」と述べ、Microsoft 365を通じたモダンワークプレースの方向性を示した。

Microsoftで「Microsoft 365」を担当するゼネラルマネージャーのCatherine Boeger氏
Microsoftで「Microsoft 365」を担当するゼネラルマネージャーのCatherine Boeger氏

 米国では、1960~1974年生まれを「X世代」、1975~1990年代前半生まれを「Y世代」、1990年代後半から2000年生まれを「Z世代」と定義付けているという。それぞれ「ベビーブーマー世代」やデジタルネイティブな「ミレニアル世代」と別称を持っているが、ポイントは世代ごとの価値観に相違があることだ。例えば、ミレニアル(=Y世代)はプライバシーに対する高い意識や起業精神が盛んといった特徴があり、同じ職場で慣例的な習慣を押しつけることが、ミレニアル世代の反発を招くといった現象は日本も米国も同様にある。

 さらに、ミレニアム世代よりも新しいZ世代は、2019年に世界人口の3割を占めると言われていることから、Boeger氏は「ITを通じて各世代をいかにつなげるかが重要だ。労働人口の5割を超えるYおよびZ世代はアジャイルであり、いつでも、どこでも仕事ができる。だからこそ、チームワークやコラボレーションが重要性を持ち、われわれもこの点に大きな期待を持っている」と話す。Microsoftは、数年にわたって共同作業環境の実現や、Microsoft Graphを通じて人と人との関係性を可視化する仕組みに注力してきた。

 そこでの中核となるMicrosoft 365は、Office 365、Windows 10、EMS(Enterprise Mobility + Security)を組み合わせたソリューションになる。Microsoftが披露する数値を見ると、企業におけるOffice 365の月間アクティブユーザー数は1億5500万人以上、同じく企業内のWindows 10デバイスは2億台、EMSの活用数も8200万台に達するという。特にOffice 365は、複数のデスクトップアプリやサービスで構築されているが、Boeger氏は2017年3月にリリースしたMicrosoft Teamsを「最も進んでいる製品。会話や会議、組織内の人々をつなげてチームワークの改善に用いられている」と語る。

 また、9月に米国で開催された「Ignite 2018」では、Skype for Business OnlineからMicrosoft Teamsへの移行も発表された。日本マイクロソフトの説明によれば、10月1日から500シート未満の新規のOffice 365テナントにはSkype for Business Onlineが含まれず、企業はMicrosoft Teamsの導入を検討しなければならない。だが、既にSlackに代表させる企業用コミュニケーションツールは多種多様に存在し、利用側は複数のアカウントやライセンスを購入しなければならないのが現状だろう。この点についてBoeger氏は、「個人も企業もデータを保護しなければならない。セキュリティとプラットフォーム構築が重要だ。(Azure ADやMicrosoft Authenticationを通じて)パスワードレスが戦略の1つになる」と説明した。

日本マイクロソフト 業務執行役員 Microsoft 365 ビジネス本部長の三上智子氏
日本マイクロソフト 業務執行役員 Microsoft 365 ビジネス本部長の三上智子氏

 直近では、日本経済団体連合会(経団連)の会長執務室へのPC導入やメールによる業務化といった話題が飛び出した。IT業界関係者には驚きのニュースとしてとらえられたが、その点でアドバイスを求めたある記者に対してBoeger氏は、「(当社の)役員はNadella CEO(Microsoft最高経営責任者のSatya Nadella氏)に仕事の方法を学び、社内文化の変革に取り組んでいる。同時に顧客提供の文脈からリーダーシップを本社に招き、文化の変革も広げてきた。もちろんわれわれも完全ではないし、日々YammerとMicrosoft Teamsを併用したり、タウンホールミーティングも開催したりすることで努力している」と応じた。

 このように、モダンワークプレースの実現には自社の努力が必要という部分もある。日本マイクロソフト 業務執行役員 Microsoft 365 ビジネス本部長の三上智子氏は、「2017年7月から顧客にトレーニングを実施し、IT利用と活用について検討を支援する専任部隊を設けた。(ニトリホールディングスの導入事例のように)アンバサダーによる取り組みが現時点で一番の成功例であり、(Microsoft製品を)どのように使ってもらっているのか注力している」と語った。

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