企業セキュリティの歩き方

突然CISOに任命されたら? CISOがサンドバッグにならないための事前準備

武田一城 (ラック) 2019年01月07日 06時00分

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 本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティを向上させていくための視点やヒントを提示する。

 前回の記事「CSIRTの現状と苦悩、次の一手」では、2015年に経済産業省や情報処理推進機構(IPA)から公開された「サイバーセキュリティ経営ガイドライン」(2015年にv1.0、2017年にはv2.0が公開された)によって、最高情報セキュリティ責任者(CISO)の任命やCSIRT(Computer Security Incident Response Team)の設置が日本の企業や団体の間で進んだことと、米国国立標準技術研究所(NIST)が作成した「サイバーセキュリティフレームワーク」に記載されている「特定」「防御」「検知」「対応」「復旧」の5つのプロセス整備の重要性について記した。今回は、CISOに任命された人が実行しなければならない次のアクションについて述べたい。

CISOとは何なのか?

 CISOは、企業内で情報セキュリティを統括する経営レベルの最高責任者(担当役員のポジションが多い)であり、サーバやPC、ネットワークなどの情報システム全般のセキュリティ対策はもちろん、機密情報や個人情報などその企業で「重要な情報」と定義された情報を守ることを主な役割としている。また、より対象範囲の広い「最高セキュリティ責任者(CSO=Chief Security Officer)」と称する場合もあるが、各社によって事情が異なるだけで、本質的な存在意義にほとんど違いはない。

 日本では、標的型攻撃などの脅威や本連載で何度か取り上げているサイバーセキュリティ経営ガイドラインなどによって、CISOの必要性や認知度が広まった。CISOは、最高情報責任者(CIO=Chief Information Officer)や情報システム部長、非IT系部門のリスク管理部長や管掌役員などが兼務している場合なども多く、職位や組織内での立場は企業・組織でまちまちだ。しかしながら、情報セキュリティの脅威や課題、現状を経営層に伝えることが最も重要な役割であることに変わりはない。

 情報セキュリティがITシステムの問題として情報システム部門だけで対応していく時代は終わった。セキュリティ対策は、企業や組織全体の課題として認識し対応すべきものになった。加えて、万一のインシデント発生時にCSIRTなどで対応していく機能が、社会的責任を果たす企業として必要不可欠なものとなった。その中心がCISOであり、サイバーの脅威とその対策の最前線である現場と経営層をつなぐ大事なポジションとして注目されてきたのだ。

CISOは何をすべきか?

 サイバーセキュリティ経営ガイドラインが公開された2015年当時、筆者はこれが、セキュリティ業界の有識者や技術者たちからそれほど高く評価されなかったと感じた。なぜなら、サイバー攻撃の手法や具体的な防御策などに関する記載がほとんどなかったからだ。最前線で活躍している人たちには物足りなかったのではないか。

 それでも、先述したようにこのガイドラインの公開で、情報システム部門だけに頼らないセキュリティ対策の重要性が広く認知された。それは、前回の記事で示した日本シーサート協議会(NCA)の会員数の増加ぶりでも裏付けされる。このように、サイバーセキュリティ経営ガイドラインは非常に意義があるものだったが、一つ足りないものがあった。それは、「CISOが具体的に何をどうすればよいのか?」ということに関する記載だ。

 このガイドラインの内容は、ポリシーの順守を目的としたPDCAフレームワーク活用とCSIRT設置が中心であり、CISOがその業務執行に必要なビジネスの視点などが盛り込まれていなかった。つまり、経営者はCISOを任命し、リスク管理やセキュリティ対策に関する多くの権限を与えた。しかし、任命されたCISOは、「自分が何をしてよいか分からない」という状況に陥ってしまうことになる。

 もちろん、任命されたCISOが経営や業務執行に関する理解と情報システムの構造や要素技術、サイバー攻撃の手法などに熟知していれば、現場と経営者の橋渡しも問題なくできるだろう。しかし、それらに高いレベルで精通する人材など、そうはいない。その結果、名ばかりのCISO、機能しないCISOが誕生してしまうことになる。

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