本連載では、筆者が「気になるIT(技術・製品・サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、日立製作所の統合システム管理ソフト「JP1」最新版である。
1994年の誕生から進化し続けてきた「JP1」
日立製作所が先頃、統合システム管理ソフト「JP1」の最新版である「JP1 Version 12」を提供開始すると発表した。企業の多様なIT環境を統合的に運用管理することでIT環境全体の可視化や業務プロセスの自動化を促進するもので、企業のデジタル変革を支援するとしている。
JP1 Version 12の詳しい内容については関連記事をご覧いただくとして、本連載で今回「JP1」を取り上げたのは、気になるITであるとともに、長年にわたってその時々に求められる運用管理のコンセプトやそれを実現する技術を生み出し、競合製品の追随を許さぬ確固たる実績を積み上げてきた、その重みを感じるからだ。(図1)
図1:4つの分野からなるJP1の運用管理機能(出典:日立製作所)
その時々に強化されてきた内容についてキーワードを挙げながらJP1のこれまでの歴史を振り返ってみると、1994年にジョブ管理機能を中心とする「V(バージョン)1」誕生時のキーワードは「オープン」だ。オープン環境でもメインフレームと遜色のない、高信頼なバッチ処理や業務の自動化をマルチプラットフォームで実現したのが、JP1誕生の原点である。
その後、2000年に登場した「V6」では「インターネットセキュリティ」対策を強化、2003年の「V7i」ではITIL適用などで「統合的」な管理環境を拡充、2006年の「V8」では「内部統制」の強化や「グリーンIT」への対応、2009年の「V9」では「仮想化」や「クラウド」への対応、2012年の「V10」では「ハイブリッドクラウド」への対応、2016年の「V11」では「JP1 as a Service」を掲げた。
そして、同様の取り上げ方でいくと、今回の2019年の「V12」は、「IoT」や「RPA」を活用したシステムの横断的な管理、および「AI」活用によるインテリジェントな運用を目指したものとなる。
「JP1」がユーザーに受け入れられている理由とは
IDC Japanによると、運用管理を表すシステム/サービス管理ソフトの国内市場における2017~2022年の年間平均成長率は4.0%で、2022年には3292億円に達すると予測。「今後、クラウド環境上のITシステムに対する運用管理の需要がさらに拡大し、それによってシステム/サービス管理ソフトの導入が促進される」との見方を示している。(図2)
図2:システム/サービス管理ソフトの国内市場における2017~2022年の推移(出典:IDC Japan)
ちなみに、同社による2018年の同市場の調査結果はまだ出ていないが、2017年の市場規模は前年比2.8%増の2706億円。ベンダー別売上額シェアでは、日立がトップだった。
JP1は金融をはじめとする各種産業や官公庁など、業種、規模を問わず、幅広いユーザーに利用されている。なぜ、JP1はユーザーに受け入れられているのか。日立は、「長年の製品開発で培った確かな品質」「さまざまなプラットフォームや環境に適用可能」「10年間保証で充実のサポートサービス」「全国に5万人以上いるJP1資格認定取得者によるサポート」、そして世界に向けては「メイド・イン・ジャパンの品質」を挙げている。
IT分野の中でも運用管理の世界は非常に重要な領域だが、専門的なこともあって一般的な話題に上る機会は少ない。しかし、今回のJP1最新版の発表を受けて、これまでJP1が対応してきた技術や環境を考えると、これから改めて運用管理の重要性が見直され、再注目されることになるのではないか。そんな予感がする。