富士通と富士通研究所は、ブロックチェーン技術を応用した「電力需要家間取引システム」を開発した。工場や店舗などの電力の使用者である“需要家”ごとの自家発電や節電で生み出される余剰電力を、需要家間で効率よく融通する仕組みをブロックチェーン上に適用した取引システムになる。
エナリスの協力のもと、消費電力の実績データに同システムを活用したシミュレーションを実施した結果、デマンドレスポンス(需要応答)の成功率が約4割に上場することを確認した。
需要家間で電力の融通を行うデマンドレスポンスのイメージ(出典:富士通)
デマンドレスポンスは、電力会社と需要家が協力して電力の使用量を調整することを指す。電力が足りなくなると予想されるピーク時間帯に、節電に貢献した需要家へ対価を支払うことで、電力使用量の削減や平準化を図る。近年取り組みが進んでいるが、調整要請に対して需要家が対応できず、デマンドレスポンスの成功率が向上しない点が課題となっていた。成功率の向上は参加する需要家の増加につながり、安定した電力供給や、狙いの一つでもある再生可能エネルギーの導入拡大を可能になる。
従来のやり方では、節電量を制御するアグリゲーターが各需要家と1対1でやりとりし、節電量の配分や達成可否の確認を行っている。需要家が節電量を高確率で達成するためには、節電量が不足している場合に、他の需要家の節電量の一部を迅速に融通し合う取引が有効とされるが、実現していなかった。
今回開発したシステムでは、ブロックチェーン技術を活用し、アグリゲーターと契約した需要家同士で余剰電力を相互に融通することが可能となる。
需要家間同士での電力融通取引技術の概要(出典:富士通)
デマンドレスポンスでは、取引システムに登録されている売り要求から融通可能な電力の総和を求め、買い要求の中から買える分だけ順番に素早く承認処理を確定する段階と、回答後に確定済みの買い要求に対して売り要求を無駄なく配分することで取引を最適化する段階がある。
今回、この2つの段階からなる電力融通取引技術(特許出願済)を適用した取引システムをブロックチェーン上で構築し、これらの取引を記録することで電力融通の取引結果の透明性を保証し、確定した売り買いの取引結果(電力の節電量)に基づいた報酬の正確な配分を可能にしている。
富士通では今後、システムの実環境での検証を進め、2019年度以降の実用化を目指す。