情報通信研究機構(NICT)、神戸大学、エルテスは、プライバシー保護での深層学習技術による不正送金の検知精度向上に向けた実証実験を開始すると発表した。また開始にあたり、同実証に参加する金融機関を募集する。
この実証は、これまで3者が研究してきたプライバシー保護深層学習技術「DeepProtect」の精度検証をさらに進め、より多くの銀行からのデータを統合することで、不正送金検知の精度を向上させることを目的としている。
「DeepProtect」はNICTが開発した技術で、各組織内で学習した結果を暗号化して中央サーバに集め、同サーバで暗号化したままこれらの学習結果を更新できる。この技術を活用することで、各組織が持つデータを外部に開示することなく、複数組織が連携することで多くのデータを基にした学習が可能となる。
「DeepProtect」の概要
3者は、これまで千葉銀行などの協力を得て、金融業界で課題となっている不正送金(振り込め詐欺など)の検知実験を行ってきた。実験では、NICTの持つ暗号やプライバシー保護の技術、神戸大学の持つ機械学習に関する知見、エルテスの持つリスク検知に特化したビッグデータ解析ビジネスの経験を活用している。
これまでの各銀行における個別の検知実験では、取引明細情報及び口座情報を用いて、特殊詐欺などの可能性が疑われる取引の検知をさまざまな機械学習手法を用いて試み、実際の不正送金のうち、約70%を不正送金であると正しく判定している。しかし、個々の銀行で日々発生する不正送金の件数は、学習データとしては十分多いとはいえず、より多くの銀行からのデータを統合する今回の実証が起案された。
3者は今回の実証を進めることで、2021年度末までに複数機関で連携した学習が可能なシステムの構築を目標にしている。なお参加金融機関に、金融データ解析やプライバシー保護データ解析技術の利用に対する費用負担は伴わないとしている。