山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国の一部で「Windows XP」がいまだに現役の理由

山谷剛史

2019-03-05 07:00

 「Windows 7」の延長サポートが終了まで1年を切ったというのに、中国では「Windows 10」の導入率は低い。

 StatCounterによると、中国の2019年2月におけるWindows OSシェアのうち、「Windows 10」が占める割合は35.38%となっている。つまり3台のうちの1台にしかWindows 10がインストールされていない計算だ。Windows 7が最も高く49.16%、つまり2台に1台がWindows 7を搭載し、続いて「Windows XP」が11.6%となっている。Windows XPは、中国でPCやインターネットが普及期を迎える2001年に発売された。中国人にとっては懐かしのOSといえる。「Windows 8.1」は2.26%と低い。

 参考までに日本はというと、Windows 10が60.55%で、Windows 7が29.89%、Windows 8.1が6.87%、Windows XPが1.1%となっている。全世界では、Windows 10が54.78%、Windows 7が33.89%、Windows 8.1が6.55%、Windows XPが1.97%となっている。日本は世界平均より良い結果といえる。一方で中国は変化が激しいといわれ、かつ海賊版天国といわれながらも、最新のWindowsへのリプレースが進んでいない。

 Windows XPはリリースから18年。既にサポート外となったソフトウェアやサービスは、Officeやセキュリティソフト、iTunes、Steamなど数知れず。中国のセキュリティレポートにおいても、セキュリティ対策の最善の策はOSとセキュリティソフトを最新の状態にしておくこととし、しばしばテレビなどでセキュリティ対策を呼びかけるが、思うように更新が進まない。ECサイトではWindows 10だけでなくWindows 7のライセンスキーがいまだに販売されている。

 Windows XPが残ってる理由は、当時開発されたソフトウェアを動かすためだという意見を聞いた。一部の国営企業が当時開発されたソフトウェアを更新せずに使い続けているという。更新コストが高いのかもしれないし、更新できるソフトウェア作りをしていなかった可能性もある。街の至るところにある、フォトレタッチやDTPソフトを使った印刷屋でも、Windows XPと対応ソフトで間に合っている店が多い。また農村部においては、ネットカフェでWindows XP搭載端末をよく見かけるとのことだ。

 理由の一つとして考えられるのが、中国におけるスマートフォンの重要性の高さだ。もはや日本ほどPCを重要視していないのではないか。中国のサイバーセキュリティ法「網絡安全法(ネットワークセキュリティ法)」により、ネットサービスを利用する際は、例えばPCでECサイトを利用するにも、最初にスマートフォンから電話番号を使って実名認証しないと利用できないという状況だ。そのため、PCでネットサービスを利用することが手間で面倒になっている。

 また、個人の利用でも中小企業の業務利用でも、現状で特に困ることはないし、いざとなれば自分で更新できる技量を持っているから、Windows 7あるいはWindows XPを使い続けているのが一因ではないだろうか。

 中国のインターネット利用者の中でも早期のユーザーである30代後半から40代前半の世代は、貧しいながらも給料数カ月分のPCを購入した。できるだけ安く買うべく、自作PCを組み立てて、海賊版ソフトを入れていた。そうした環境にいたから、いざとなれば自分で環境を構築するノウハウがある。

 中小企業を見ると、社内のPCが企業内で全く統一されていないということがよくある。いよいよWindows 10に更新しなければならないと認識すれば、システムインテグレーターを介さず、社員が自分たちでWindows 10にアップデートするのだろう。

山谷剛史(やまや・たけし)
フリーランスライター
2002年から中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、ASEANのITや消費トレンドをIT系メディア、経済系メディア、トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に『日本人が知らない中国ネットトレンド2014』『新しい中国人 ネットで団結する若者たち』など。

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