東日本大震災から8年、BCP策定の課題は「外部連携」と「想定範囲」

大場みのり (編集部) 2019年03月11日 16時22分

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 NTTデータ経営研究所は、「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に実施された「東日本大震災発生後の企業の事業継続に係る意識調査(第5回)」の結果を発表した。この調査は、2011年7月から4回にわたって実施されてきた。今回は、BCP(Business Continuity Planning:事業継続性計画)の策定状況などに加えて、2018年に発生した平成30年7月豪雨(以下、西日本豪雨)と平成30年北海道胆振東部地震(以下、北海道胆振東部地震)において、策定したBCPの実効性と機能しなかった原因について調査を行った。

BCPの策定状況

 BCPの策定状況を全ての回答者に尋ねたところ、「策定済み」と回答した企業は43.5%で、「策定中」を含めると64.9%の状況であった。第2回調査(2012年12月21~2013年1月10日実施)ではBCP策定済み企業が25.8%から40.4%と大幅に増加していた一方で、近年は「策定済み」「策定中」と回答した企業の割合に大きな変化は見られないといえる。特に、製造業のBCP策定が全く進んでいないことが分かった。その要因として、自社設備の復旧に加え、原材料の供給などサプライチェーン全体への対応が必要だと考えられる。地域別に見ると、関東が「策定済み」と「策定中」を合わせて68.9%と最も高い。最もBCP策定が進んでいないのは北海道で、「策定済み」と「策定中」を合わせて51.2%だった。また、資本金別と売上高別でBCP策定状況を見ると、規模の小さい企業ほどBCPの策定が遅れていることが分かる。

BCPの策定対象

 BCPの策定状況を「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者に対して、想定しているリスクを尋ねたところ(複数回答可)、「地震(主に直下型地震)」が74.3%と最も多く、地震を想定してBCPを策定している(策定を考えている)企業が多いと分かった。「地震以外の自然災害(風水害など)」を想定している企業は、2018年12月時点で54.0%と前回調査から約5ポイント増加した。その理由として、2018年7月に発生した西日本豪雨の影響が考えられる。一方で、「鳥、新型インフルエンザなどによるパンデミック」への想定は、第1回調査の39.7%から26.4%と減少しており、対策を取っていない企業が増加している。

BCP策定における課題

 BCPを「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者に、自社のBCPにおける課題を尋ねたところ、半数以上(53.1%)が「課題がある」と回答した。地域別では、九州、沖縄が67.9%と最も高く、他の地域と20ポイント近い差がある。その背景には、2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」を受けて、これらの地域が事業継続への取り組みを進めている最中であることが考えられる。課題の理由(複数回答)に関しては、「外部からの調達や供給が無ければ、事業を継続できない」という意見が47.6%と最も多かった。「BCPを策定すること自体に課題がある」という意見は大幅に減少したことから、策定に必要な知識や資源に関する課題は解決に向かっているが、外部連携を実現する方法が求められているといえる。

策定したBCPの運用、管理状況

 BCP策定済みの回答者に対し、運用や管理状況を尋ねたところ、社内報や社内ポータルを通じた説明は「実施している」と「これから実施する予定」を合わせると84.8%と最も高く、多くの企業で実施されていることが分かった。一方で、BCPの人事異動や組織変更などを踏まえた更新を「実施している」と回答した企業は42.9%にとどまっており、半分以上が継続的なメンテナンスを十分に行っていないことが判明した。その主な理由は、意識不足と人員不足だと考えられる。BCPの運用、管理を「実施しておらず、実施する予定もない」と回答した企業に、実施しない理由を尋ねると「BCPに対する社内要員の取り組み意識が希薄」という回答が最多で、次いで「そこまで人員を割けない」という回答者が多かった。

BCPの実効性と機能しない要因

 BCPを「策定済み」「策定中」「策定予定あり」とした回答者の中から、西日本豪雨と北海道胆振東部地震の被害を受けた地域に自社拠点または取引先がある企業に対してBCPの発動有無を尋ねたところ、BCPが発動した企業は、西日本豪雨で21.7%、北海道胆振東部地震で28.5%だった。BCPが「発動した」とした回答者に対して、機能の有無を尋ねたところ、それぞれ約6割が「期待通り機能し、特に問題は無かった」としている。この回答は、東日本大震災直後に実施された第1回調査の結果と比較して1.7倍に増加している。東日本大震災と西日本豪雨、北海道胆振東部地震では、被害内容や規模が異なるため単純に比較できないものの、東日本大震災の教訓が生かされていると考えられる。

 一方、「BCPはおおむね機能したが、課題もあった」「全く機能しなかった」とした回答者に具体的に何が機能しなかったかを尋ねると、西日本豪雨では「災害、事故などが発生した際の体制設置」や「災害、事故などが発生したことを想定した訓練、教育の実施」について問題があったという声が多かった。北海道胆振東部地震では、「対策本部を立ち上げる判断基準の設定」「社員の安否確認方法」「優先して復旧すべき業務、事業の選定」について問題があったと考える企業が多い。想定通りに機能しなかった原因に関しては、「予期せぬ作業、対応が発生した」と回答した企業が多かった。このことから、BCP策定済みの企業でも、想定される事態が抜けていないか、地震だけでなく風水害やパンデミックなどのリスクにも対応できるBCPになっているかを確認する必要があるといえる。

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