携帯通信網、10年ぶりの刷新期へ--NRIが「ITロードマップ」を発表

大場みのり (編集部) 2019年03月07日 14時18分

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 野村総合研究所(NRI)は3月5日、2019年現在から5年程度先までの間に考えられる情報通信関連技術の進展をまとめた「ITロードマップ」を発表した。注目すべき技術として、同社が取り上げたのは「エッジAI(人工知能)」「データサイエンスプラットフォーム」「非金融分野のブロックチェーン活用」「5G(第5世代移動通信ネットワーク)と次世代ワイヤレス技術」「ドローン」「EX(Employee Experience:従業員体験価値)」「情報銀行と信用スコア」の7つである。

 さらに、年々重要度が高まっている情報セキュリティ技術の中から、「デジタルビジネスにおけるセキュリティ新機軸」「プライバシーの保護とIDの本人確認」「脅威インテリジェンス」「IoT×無線のセキュリティ」「ITシステムのマルチクラウド化」の5つを取り上げた。そして、これらのテーマのうち、あらゆるモノがつながり人々が快適に暮らせる社会の基盤となるのが「5G」と「次世代ワイヤレス技術」だとする。NRIによると、数年のうちに以下のような発展が見込まれるという。

 移動通信用の無線通信網、すなわち携帯電話の通信網は、1980年代に登場したアナログ無線方式の1G(第1世代)から約10年ごとに進化を遂げてきた。2010年代に登場した4G(第4世代)は、スマートフォンの爆発的な普及とともに世界中で整備が進み、モバイル端末からのSNSや動画の利用を支えている。2018年6月、業界団体の3GPP(Third Generation Partnership Project)が4Gの後継として5Gの技術仕様を策定し、現在は世界中の通信事業者がこの仕様に基づいて5Gサービスの開始準備を進めている。

 IoTの普及に伴い、携帯電話通信網以外の無線通信技術の変革も始まっている。IoTで使用される通信モジュールは、センサや検針器、カメラのような小型機器に組み込めるように、低コスト、低消費電力、かつ利用状況に応じた適切な通信エリアの確保が必要だ。そして、これらのニーズに応える無線技術として、低消費電力で電波の伝達距離が最長数十kmの無線技術「LPWA(Low Power Wide Area)」や、個人の範囲で用いられる無線通信「PAN(Personal Area Network)」技術が登場し、注目を集めている。NRI は、5Gと次世代ワイヤレス技術の進化を次のように予測した。

2018年度以前:LPWAの活用は実証実験から実運用へ

 米国の大手通信事業者のVerizon Wirelessが2018年10月から家庭向け5Gサービスを開始するなど、5Gの商用化においては米国が先行している。日本国内の大手通信事業者は、放送、鉄道、建設、不動産など、さまざまな企業と共同で5Gの活用法を検討する共創プログラムを立ち上げ、5Gならではのサービスを模索している。

 LPWAにおいては、さまざまな方式で実証実験から実運用に向けての取り組みが進んでいる。大手通信事業者に加え、他の通信事業者の通信網を利用して移動体通信サービスを行っているMVNO(Mobile Virtual Network Operator)がLPWAとIoTの総合サービスを提供するなど、無線通信網を用いて企業のIoTへの取り組みを支援する活動を開始した。

※★は提供中(実験的なサービス提供を含む)、△は予定(出典:NRI)
※★は提供中(実験的なサービス提供を含む)、△は予定(出典:NRI)

2019~2021年度:5Gサービスが開始、東京五輪は絶好のイベント

 日本で5Gサービスが開始となる時期は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックだろう。それに向け、2019年夏には事前サービスが始まる予定である。大勢の人が集まる場所には、スマートフォンを起点として膨大なデータが発生するため、5Gの「高速かつ大容量の通信が可能」という特性が生きると期待されている。

 例えば、選手や審判の視線で試合の動きを視聴できるようになれば、競技場や周辺施設にいる観客はVR(仮想現実)機器や大画面テレビを通じて映像を共有し、まるで自分がその場にいるかのような臨場感あふれる体験ができるようになるはずだ。東京オリンピック・パラリンピックは、5Gを基盤としたサービスを披露する絶好のイベントになるだろう。

 LPWAに関しては、IoTでの利用が拡大していくと予想される。特に検針作業や設備監視などのケースでは、端末が1度当たりに送信するデータ量は少なく通信頻度も低いため、業務効率化の面で多大な効果を発揮すると期待している。

2022年度以降:5G活用の進展とハイブリッドワイヤレスの実現

 日本では、4Gのサービス開始から全国展開まで4、5年かかったことを踏まえると、5Gはこの時期、利用ニーズが高い都市部から郊外や地方へと利用可能なエリアを拡大していくと予想される。

 また、高信頼と低遅延を実現する「URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communication)」や、多数の端末の同時接続を可能とする「mMTC(massive Machine-Type Communication)」といった5Gの機能特性を活用したアプリケーションの開発や導入が徐々に広がっていくだろう。そして、重機の遠隔操作や遠隔診療など、誤動作や停止が許されない業務やインターネットに常時接続できるコネクテッドカーでの5Gの活用も視野に入ってくる。

 低消費電力で電波の伝達距離が数十kmにまで及ぶ無線技術のLPWAは利用シーンが拡大し、利用範囲も農地や工場といった局所的な導入から都市部を含む広範なエリアに拡大していくはずだ。

 5GやLPWAなど新たな無線ネットワークの整備が進むと、それら複数の無線技術を同時かつ緊密に活用できる「ハイブリッドワイヤレス」な仕組みが実現する。それによって、企業は通信遅延がサービスの品質に影響するような場合には5Gを用い、処理開始のきっかけとなる情報の送信や、対象から離れた地点から観測や計測を行って取得したテレメトリ情報の定期配信にはLPWAを使うなど、状況に最適なネットワークを使えるようになると予想される。

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