日本IBMは3月26日、データベース事業に関する戦略説明会を開催した。7月に「IBM Db2」の最新版をリリース予定で、それに際して“AIデータベース”というコンセプトを打ち出した。
これまで、データベース領域における人工知能(AI)の活用では、ワークロードの最適化、バックアップやリストアの自動化、ハードウェアリソースの最適化、データ圧縮の自動化&最適化など、機械学習によって運用負荷の大きいデータベースインフラの維持や保守をAIで極小化するというものだった。IBMではこれを「Powered by AI(AIを組み込んだデータベース)」と呼び、既にクラウドやオンプレミスのDb2に実装しているという。
AIデータベースではさらに一歩踏み込んで、業務やアプリのAI化を後押しし、AIによるビジネスの加速を実現する「Build for AI(AIを生み出すためのデータベース)」を実現する。その具体策として、(1)AIに必要なあらゆるデータを仮想統合する「データ仮想化」、(2)データに隠された新たな洞察を導き出す「Cognitive Query」、(3)自然言語で人と会話するような「データ探索」――の各エリアに注力する。
データ仮想化では、あらゆる場所に点在する複数のデータソースにたまっているデータを物理的に1カ所に集めることなく仮想的にデータを統合する。データの集約を手動で行うと、データの整合性を確保するのに手間がかかるほか、データの移動やコピーが無駄になってしまうという問題があった。
これに対して、IBMのアプローチは、AIを使ってデータソース同士に自律的なやりとりをさせることでデータを取得し、データの移動やETL処理を不要にするというものだ。データを保持するエッジノードは周辺と自律的に最適ルートで通信処理を行い、管理ノードは最後に必要最低限のマージ処理だけを行うため、全体の負荷を低減できるとしている。また、データウェアハウス(DWH)を作らずにデータを統合することも可能になる。
従来の技術とデータ仮想化の違い
Cognitive Queryは、教師なし学習によってデータソースをベースとして学習モデルを作成し、その学習モデルを使ってSQL文に自動で変更を加えるというものだ。既存のSQL文では表現しきれない“それらしき”データや新たな洞察を自動で導き出せるようになる。
データ探索においては、自然言語によるデータ可視化と予測分析を可能にする「Db2 Augmented Data Explorer」を提供する。「月ごとの平均売上」などと自然言語で入力すればそれがそのまま表示され、データを確認する軸も自動的に検知・提案してくれるようになっている。現在はベータ版で提供されており、7月に正式版がリリースされる予定。
大手機械要素部品メーカーのTHKが「IBM Db2 Warehouse on Cloud」を導入したことも明らかにされた。海外の販売データと国内の生産データを対象としたデータ分析基盤を構築し、基幹データの一元化とリアルタイム化を実現した。
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