SAPジャパンは4月2日、パートナーとのエコシステムによるビジネス施策に関する説明会を開催した。顧客企業のデジタル化対応支援を柱に、国内の事業規模を現在の7000億円から5年後に2024年には1兆4000億円に拡大させる。
SAPとIDCの共同調査によると、グローバルでのSAP関連ビジネスの市場規模は1000億ドルに上り、2024年には2000億ドルに達すると予想している。SAPジャパン バイスプレジデント チーフ・トランスフォーメーション・オフィサー兼デジタルエコシステム統括本部長の大我猛氏は、「グローバルに占めるSAPジャパンの事業規模は6~7%。これに基づけば日本では現在の7000億円から1兆4000億円に拡大する。当社関連のビジネスが活況を呈し、パートナーの人材が枯渇している」と説明した。

SAPパートナーエコシステムにおける市場の現状と5年後の見通し
2018年はパートナーエコシステムの拡大が進み、トレーニング参加者はのべ4610人、新規の認定コンサルトは2888人(のべ2万人)、新規パートナーは53社、パートナーとの新規パッケージソリューションは30種類に増えたとしている。
これまでのエコシステムのビジネスは、企業顧客の統合基幹業務システム(ERP)導入に伴うシステムインテグレーション(SI)プロジェクトが主体だった。今後の施策では、「デジタル変革」での新規事業開発の支援に注力する方針で、パートナービジネス施策では新たに「パートナーサクセスプログラム」を立ち上げる。近年、SAPが標榜する「Intelligent Enterprise」を具体化した取り組みを拡大させていくという。
「パートナーサクセスプログラム」では、事業計画の作成から事業化までをエンド・ツー・エンドで支援する。従来の施策や新規の施策を体系化し、パートナーマッチングや人材採用活動の施策を強化するほか、新規ではアプリケーション開発および技術コンサルティングのワークショップを導入している。パッケージソリューションについてもS/4HANAを中心に、人材(SuccessFactors)、購買(Ariba)、IoT(Leonardo)など多様な領域に展開し、SAPとパートナーの強みを“資産化”させていくとした。

新たにスタートした「パートナーサクセスプログラム」の概要
また「Intelligent Enterprise」は、SAPアプリケーションを含む広範なデータソースを人工知能/機械学習、IoT、アナリティクスといったテクノロジプラットフォームに集約、処理し、ビジネスにつながる洞察を提供する。2019年は、パートナーによる顧客への「Intelligent Enterprise」提案を加速させるべく、S/4HANAとLeonardoのパートナーコンソーシアムを「Intelligent Enterprise パートナーコンソーシアム」に統一し、SAPのプロフェッショナルサービスを提供するデジタルビジネスサービス事業本部とパートナーの連携を強化する。
常務執行役員 デジタルビジネスサービス事業本部長の工藤晶氏によれば、SAP全体では約2万5000人(日本は約500人)がプロフェッショナルサービスを担当し、42万5000以上の顧客を抱える。事業革新に向けたアドバイザリーやパートナーとの協働における技術支援などを手掛け、「パートナーサクセスプログラム」におけるワークショップなども担当する。SAPの製品・ソリューションを用いた150種類以上のサービスメニューを展開している。

「Intelligent Enterprise」における四国電力での取り組み事例
大我氏によれば、向こう5年間でSAPの認定コンサルトが数千人規模で不足する見通しで、パートナーの人的リソースの確保が喫緊の課題という。端的には2025年にサポートが終了するSAP Business Suite 7などERPのS/4HANAへの移行対応が課題となっているものの、今後のパートナーエコシステム施策では、ERPのみならずデジタル変革全般に対応できるパートナーの“質”的な変化を促していくとしている。