米Intelは4月2日(現地時間)、プロセッサや不揮発性メモリデバイス、ネットワークコントローラなど、データセンター向けの広範な新製品群を発表した。ここでは、発表に先立って開催された事前説明会などの情報も交えながら、今回発表された製品群を概観する。
今回発表の新製品群の概要(出典:Intel)
Intelは、数年前から「Data-Centric」というキーワードに基づいてデータセンター向けビジネスを推進してきた。「IA/x86系プロセッサの会社」という同社のイメージに照らせば、Intelは長らく「プロセッシング/コンピューティングの会社」だったと言える。そのIntelが「Data-Centric」と言い始めているという事実からも、昨今のデータ量の爆発的増加およびそのデータを踏まえた機械学習(ML)、深層学習(DL)といった、いわゆる人工知能(AI)技術の発展のインパクトの大きさがうかがえるだろう。
データを中心に据えた場合の同社のデータセンター向け製品戦略は、現在3つのキーワードで整理されている。「MOVE FASTER(より高速な移動)」「STORE MORE(より大量の保存)」「PROCESS EVERYTHING(全てを処理する)」――の3つだ。シンプルに、MOVE FASTERはネットワークなどのデータ転送に関連する製品、STORE MOREはメモリ/ストレージ関連、そして、PROCESS EVERYTHINGはプロセッサに関する取り組みだ。今回の発表では、この3分野の全てで新製品が発表されるという大規模なものになっている。
プロセッサ関連
まず、プロセッサ分野では「Intel Xeon Scalable Processor」が第2世代へと進化した。最上位とする「Intel Xeon Platinum 9200 Series」は、型番からも分かるように、百の位の数字が「2」となっているのが、「第2世代」を意味している。最上位モデル「Intel Xeon Platinum 9282」は、56コア/3.8GHz(Turbo時、ベースクロックは2.6GHz)でキャッシュ容量は77MBという規模を誇り、前世代で同等の位置付けだった「8180」との比較で、平均2倍の性能向上を実現しているという。
第2世代では、AI処理の高速化機能が盛り込まれた点もトピックだろう。Xeonには「Intel Deep Learning Boost VNNI(Vector Neural Network Instruction:Intel DL Boost)」が実装され、大幅な性能向上を実現したとうたわれている。
第2世代Xeon Scalable ProcessorにおけるIntel DL Boostによる性能向上(出典:Intel)
プロセッサの処理性能という視点では、AI処理の高速化手法としてGPUの活用に注目が集まり、NVIDIAが存在感を高める一方、IntelはGPUへの取り組みでやや遅れをとった感があるのは否めない。現時点では、Intelは直接GPUでNVIDIAに対抗するのではなく、GPU以外の高速化手法を組み合わせてGPUに対抗する戦術を採っていると見てよいだろう。上述のIntel DL Boostもその一環であり、Field Programmable Gate Array(FPGA)への積極的な取り組みは、「AI処理を最速化するためのGPU以外の手段」として位置付けることができる。
そのFPGAに関しては、新たな製品ブランドとして「Intel Agilex」が発表された。この名前は、Agility(迅速性)とFlexibility(柔軟性)の2つの言葉に由来するという。また、2015年のAltera買収からのFPGAへの取り組みが実を結び、Agilexは「完全にIntel製品となった最初のFPGA」であり、「既存のIntelソリューションに完全に統合されている」という。
新世代FPGA「Intel Agilex」の概要(出典:Intel)
例えば、AgilexはXeonとキャッシュ一貫性を保ちながら協調動作できるという。また、Xeonでも活用されている「Multi Chip Package(MCP)」をハードウェアレベルでの機能活用に積極的に生かす方向性を打ち出しており、メモリやアナログ回路、特定の論理回路などを同一パッケージ内に組み込むことで、柔軟なカスタマイズができるようになっている。
現在のプロセッサの性能向上は、かつてのような世代ごとに大幅なジャンプアップが当たり前のように実現されていた時代とは異なり、細かなチューニングやカスタマイズを組み合わせ、ワークロードの特性を踏まえた高速化技法を活用しないと、そうそう簡単には性能を上げることができなくなっている。
AgilexもXeonも、こうした細かなチューニングの差異に基づく多数のバリエーション(SKU)が準備され、提供される方針であることが明らかになっている。汎用的なデザインのプロセッサを大量販売するというモデルだけではカバーしきれなくなった結果、Intelのプロセッサといえどもユーザーのニーズを踏まえた細かなカスタマイズをすることで、結果として多品種少量生産の考え方をある程度取り入れたような対応を行わざるを得なくなってきているといえるだろう。