アームは4月11日、データビジネスの最新動向に関する報道向け説明会を開催した。2018年に買収したTreasure Dataのカスタマーデータプラットフォームについて、最新の機能拡張やサービス連携、欧州データセンターの開設が明らかにされた。
Treasure Dataは、半導体大手の英Armが2018年8月に約6億ドルで買収したデータ管理企業。2011年に米国シリコンバレーで創業し、従業員数は2019年4月時点で約200人。カスタマーデータプラットフォーム「Arm Tresure Data eCDP」をはじめとするデータマネジメントサービスとIoT基盤サービスを提供する。

Arm IoTサービスグループ データビジネス担当 バイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏
eCDPは、企業が保有する顧客データを収集・管理し、分析・活用するための基盤システム。説明会では、最新の機能拡張として、新たなグローバルナビゲーション機能の提供が発表された。
「Treasure Dataは2011年の創業時からデータエンジニア向けのデータ基盤を提供してきた。その後、デジタルマーケティングの分野にもフォーカスを広げ、ユーザーインターフェース(UI)が別々となっていた」とArm IoTサービスグループ データビジネス担当 バイスプレジデント 兼 ジェネラルマネージャーの芳川裕誠氏は話す。データサイエンティスト向けのツールとデジタルマーケター向けのツールを組み合わせることで、社内の複数のチームがシームレスに連携できる環境を整えた。

新たなグローバルナビゲーション機能
また、新たなサービス連携として、Box、Snowflake、Sansan、Mailpublisher、Karteが加わった。さらに、AndroidとUnityにおけるアプリ内での購買イベントの追跡機能も追加した。モバイルユーザーとゲームユーザーに対する、より詳細な行動情報に基づくマーケティング活動が可能になるとしている。
欧州データセンターの開設も発表された。セキュリティ基準の厳格なドイツに設置し、4月から稼働を開始している。これによって欧州圏向けにセキュアなサービスを提供する狙いだ。「北米、日本に続く市場として、欧州で顧客が増えている。それに伴い、欧州内でのデータセンター設置が必要だと判断した」(芳川氏)
現在、エンタープライズ企業を中心に日本国内350社超の導入実績があるという。説明会では、導入事例としてカカクコムとデサントが紹介された。
カカクコムは、サービスデータベースやアクセス解析ツール、アプリ解析ツールのデータをTresure Data eCDP上に集約し、そのデータをさまざまな目的で活用している。複数のデータソースを組み合わせた集計が可能になったほか、集計にかかる時間を30分から5分に短縮するなど大きな成果を得た。また、データ専門家だけでなく、企画担当者自身がデータ集計を行えるようになったという。
デサントでは、百貨店や直営店、チェーン店から集まる売上データをTresure Dataに集約し、売上予測や在庫予測に活用。生産と物流の最適化や営業活動、マーケティング活動に役立てている。
「これまでのビジネスがディスラプター(破壊者)の外圧を受ける中、変わろうとしている既存企業に対してデータの立場でこれからも支援していきたい」(芳川氏)